ただし、二人組の方に。
…………あ、狙いはそっちだけなのか。
まぁよく考えたら俺はお礼参りとやらもしてないしな。
実に関係ない。
取りあえず乱闘の輪からは離れて、入り口付近で蹲ってる金髪の方へ駆け寄った。
「おい、大丈夫か?」
「うぐっ…………ひっく、」
相当派手に痛めつけられたらしい。この間の赤毛には及ばずともだ。
ボロボロ涙を零して、泣いている。
とりあえずはと頬についていた砂埃をハンカチで拭いた。
「何でお前、一人であいつらのとこ行ったんだよ…………」
「あ、あいつら、がっ、ラビを見つけたから、デロが一人で出てこないとラビを痛めつけるって…………!」
「ラビって赤毛だろ? 入院中の奴ってそんなに簡単に連れ出せるのか?」
しかもあんな人相の悪い奴らに。
「お、思った、けどっ! もし本当だったら、ラビが…………」
「…………、」
罠って半分くらいは思ってたんだろうな。
「…………仲良いんだな、お前ら」
ちょっと感心した。
こんなタイプの古めかしい友情なんて絶滅したとばかり思ってた。
「ラビは友達だし!」
…………友達、か。
バキッ、と嫌な音がした。
振り向くと丁度、髪は乱れ頬は青黒く染まり鼻血までも出しているモヤシが黒詰襟一人を殴り飛ばした所だった。
男にしちゃ細っこい奴だと思ってたら、案外力あるんだな。
妙な所で感心する。
黒髪も奮闘しているようで殴られながらも一人を蹴り飛ばして地面に倒れさせた所だ。
こっちに向かってくる手合いは無し。
何処か他人事のようにその乱闘を眺めていると。
「…………なっ…………にさ、これ…………!」
聞いたことのある声が耳に入った。
振り向くと、そこには呆然とした顔の、赤毛がいた。
「お前、」
「ラビ…………っ!」
「ジャスデロ、一体…………」
「何で病院抜け出してきたのっ!?」
金髪がすぐさま駆け寄る。
「…………携帯に、俺が来なきゃお前らをやるって脅迫メールが来たんさ。…………つっ、」
「お、おい」
苦しそうに赤毛は胸を抑えて小さく呻く。
肩を支えると、赤毛が訝しげな顔でこっちを見てきた。
「…………何で居るの?」
「俺が聞きたいけどな。俺も呼び出されたんだよ」
「余計な事に顔突っ込むからさ」
「俺もとてもそう思う」
素直に頷くと赤毛と金髪が顔を見合わせた。
「ヒヒッ…………なんかお前、変わってるねっ」
「そうか?」
俺は至って普通だぞ。
喧嘩だってそんなにしないし、学校内で不純異性交遊もしねーし。むしろする訳が無い。
こいつらのほうが余程変わり者だ。
「ともかく、早く帰るさ。あんたみたいなのは…………」
赤毛が何か言いかけた瞬間、俺達に向かっての怒号が響き渡った。
言葉としては解読できなかった。単なる怒鳴り声だったかもしれない。
ただ分かったのはその声を上げたのは黒詰襟の金髪で、そしてその殺気立った視線は赤毛へと向けられていた。
それまで二人に襲い掛かっていた奴らは赤毛を最優先の標的に定めているのか、今度は此方に雪崩のように襲い掛かって来る。
目を見張ったきり、動かない、いや動けないんだろう金髪は突き飛ばして公園の外に放り出しておく。巻き添え食らわれても困るしな。
後ろに見える白モヤシと黒髪が此処にたどり着くのはすぐのことだろう。
ならば初撃だけ受け逃してしまえばいい。
振り上げられた一人の拳を手のひらで受ける。
「…………っと、」
そのまま手首をひねり上げて身体の自由を奪い、その場に転がした。
「!」
後ろから続いてきた奴は見事にその転がった奴に躓いて、中々笑える光景だ。人間ドミノ倒しだよなこれ。
「え、」
赤毛が鳩が豆鉄砲でも食らったような顔でこっちを見た。
だがそれよりも、転ばなかった奴は依然としてこっちを狙っている。
視界の端に光るものを感じて視線で追うと、物騒極まりない事にナイフを持ち出している奴が居た。
危ねぇな…………。馬鹿に刃物は危なすぎる。
白モヤシと黒髪に視線をやると、赤毛を守るためだろう此方に来たいようだが人垣に阻まれて来れないようだ。
なら、仕方ない。
シュルッ
竹刀袋の口を解いて、竹刀を取り出し正眼に構えた。