「…………で。何があったのか詳しく聞かせてくれるかな?」
「…………」

 HR終了後。
 他の奴らは一時間目の授業中だ。
 その時間、俺は科学の研究室にいた。

「何が、ってもな…………」
「…………」
「…………三日前の帰りに、目の前でジャスデロが他校の奴に拉致られて。それをデビットに伝えてに行ったら、丁度その時に出て来いっつー脅迫メールが来た」
「…………」
「で…………指定された駅の近くの公園行ったら、奴らが何人もいて…………乱闘になった」
「…………」

 俺がかいつまんで説明すると、コムイは大きく溜息をついた。

「成程ね…………。あのね神田君。今回の件については、複数の所から問い合わせが来てるんだ」
「?」
「一つは君のお祖父様。大事な孫がズタボロで帰って来たのはどういう訳だって、一昨日も昨日もうちの学校長が呼び出されてる。それから、警察。通報者が、東校とそれからここの生徒らしい子の乱闘だったって通報してるんだよ」
「…………」

 …………うわ。

「後、東校。君は知らないかもしれないけど、東校は八日前に誰かに乗り込まれてね。彼らは散々オートバイで校庭を走り回った上に生徒数人と喧嘩して怪我を負わせてる。まぁそれで、うちを含めた複数の学校に問い合わせが来てるんだよね。そこに来て今回の騒動で、しかも通報に寄ればここの生徒と東校生徒との乱闘だ。…………分かるよね?」

 …………特定されたな。
 っていうかその八日前の乗り込みって…………モヤシとデビットだよな…………。
 あいつら元気だなおい。

「救いは通報者が、明らかにうちの生徒の方が人数が少なかったって証言してくれた事と、君らの容姿についての言及が一切無かった事だ。自覚があるかどうかは分からないが君らは目立つんだよ。警察は…………本当はいい事ではないけれど、デビットとジャスデロのご父兄が抑えてる」
「え」
「彼らのお父さんは代議士なんだよ。…………ともかく。分かったら、以後謹んで生活してくれ。何かあったら直ぐに実力行使にでるんじゃなくて、まずは僕ら教職員に相談する事。…………次があったら何があるか分からない。退停学位なら可愛いもんだけど、そんなレベルじゃなくて僕らじゃ全く力が及ばなくなる話になるかもしれないんだ」
「…………」

 言われてる事が正論過ぎて、反論の余地もない。
 
「…………と、此処まではあっちの三人と、あとラビにも話したことだけどね」
「?」
「どーして君は女の子なのにそんなに無茶ばっかりするのかな…………」
「敵は全て薙ぎ払えって教えられてる」
「あのね。さっきの僕の話聞いてた?」

 ジト目になるコムイからはさり気無く視線を逸らしておく。
 そりゃ分かっている。この法治国家で誰彼構わず殴りかかってたらあっという間に檻の中だ。
 ――――――だけど、譲れないものだってある。

「…………あのさ。君が強いのは分かってる。女子剣道中学生の部、全国制覇だってね」
「…………」
「神田家は元々古武術に長けた家だって?」
「ああ」

 神戸から別れ神官の姻戚となった俺の家は、武を持って神に仕える主君を護って来た。
 
「昔から色々やってきた?」
「まぁな」

 古武術に分類されるものは一通り修めている。

「武術とかそういうものに関しては僕は全くの門外漢だけど。だけど…………女性が武道を修めても、時には全くの素人の男性に負けるという事は覚えておきなさい」

 まぁそりゃそうだ。
 どう頑張った所で男の腕力には敵わない。基本的には押さえ込まれた時点で負ける。それが逆上している男相手なら尚更だ。
 うちの道場だって女向けの護身術の最初で教えるのは「とにかく逃げろ」だ。護身術は振り解くためのものであって相手を倒すためのもんじゃねぇ。
 大体礼に始まり礼に終わる道場の中での試合と実際にやりあう喧嘩での結果なんて同列に扱える訳が無い。

「あ、あ…………っ!?」
「押さえ込まれたら、どんなに鍛錬を積んだところで女性の腕では男性の、しかも敵意を持った人間には敵わないよ」


 ドン…………ッ




 小説頁へ