転校して一週間。
 
「神田君おはよー」
「…………ああ」

 …………成せば為る。
 なのかどうかは知らないが、いい加減慣れてきた。
 余りにも自然に周囲が俺を男として扱うので(それは普通に考えて性別を偽って転校してくる奴なんて居ないだろうという思い込みによるものであったとしてもだ)、俺もそう振舞うのが堂に入って来た。
 まぁ元々家ではそれらしく振舞ってきたんだから、それなりに慣れているというのも勿論ある。

「どう、学校は慣れた?」
 
 名前は知らないが顔は分かる、クラスメートの女子数人が珍しく俺の机の直ぐ近くまで来て話しかけてきた。
 俺の愛想が悪いのは俺自身理解している所でもあるし(というか、こんな厄介なコト抱えてるのに暢気に学生生活を送れる訳が無い)周囲にも常にそう思われてるようだが、物珍しさから転入初日からこういう奴らが後を絶たない。

「何か分からない事とか、ある?」

 …………期待に満ちた目。
 まて、俺に何を期待してるんだ!?
 嫌な予感しかしないぞ!?

「…………あー、」

 咄嗟に何かで話題を誤魔化そうとして…………目に入ったのが、相変わらず人の座らない席。

「…………あそこの、席の奴。一週間見てねぇけど、病気か何かか?」

 実はそもそも誰の席でも無かったら、間抜けな質問だ。しかし転校生になら赦されるだろう。

「前の? ああ…………」
「ラビ君の?」
「そう言えばまた最近見ないよねー」
「でも校内にはいるよ? 私さっき見たもん。D組の女の子と一緒に居る所」
「あれ? C組の子と付き合ってなかった?」
「変わったみたいよ?」

「…………?」

 苦し紛れに放った話題の割には、女生徒達の食いつきは良かった。
「ラビ」という奴について、色々話し合っている。

「ほんと早いよね、ラビ君の彼女の回転…………」
「あの噂聞いた? 前の前位に、ラビ君の彼女と、それより前の彼女が鉢合わせしちゃったって」
「ええー!? 何処で?!」
「体育準備室で。…………その、ね、…………を見ちゃって、それからその子学校来てないんだって」
「ホントー? 酷くない? それ」
「でもさ、そういう人だって知ってて付き合ってるんだろうし。しょうがなくなーい?」  
 
 …………随分と盛んな奴らしい。
 
「ラビ君てさ、悪い人じゃないけど、…………ちょっと良くわかんないよねぇ…………」

 …………へぇ。
 それだけ好き勝手やっといて女に嫌われてないって事はよっぽど上手く立ち回れる奴なのか。
 
「ほら、天才だからー。私達じゃ分からないわ」

 …………そんなもんなのか…………?

「天才…………か、」

 学生の身では余り聞かない呼称だが。
 その内見える事もあるか、と俺はぼんやりと女生徒達の話し声をBGMに空を見上げた。  
 今日も腹が立つほどの晴天。
 雲一つ無い青空に、クソッたれ、と腹の中で毒吐いた。



 小説頁へ