ゴッ
「あ」
「…………っ!!」
や、べっ…………!
目の前のコムイの顔は見る見るうちに青ざめ…………もとい青を通り越して土の色になっていった。
「ちょ、お、い、大丈夫か!?」
俺の腹の上辺りでぐったりとし始めたコムイを慌てて揺さぶる。
…………さっきの瞬間。コムイに机の上に突き飛ばされ転ばされ、すぐ近くに顔があった。
思わず咄嗟に反撃したんだが、…………反撃を仕掛けた場所が悪かった。
急所だ。
「お゛お゛お゛お゛お゛…………」
「す、すまん」
しかも結構しっかり爪先めり込んだよな今…………
「ぎぼち゛わ゛る゛い゛…………」
「うわ…………ちょ! 待て! 吐くな! 吐くなら流し行けー!!」
「…………うう、お婿に行けなくされた…………神田君にお婿に行けなくされた…………」
「如何わしい言い方すんな!」
暫く背を摩ったり氷嚢を探しに出たりとしているうちにコムイは何とか復活してきたのか、何とか椅子に座った。
「え、と。…………潰れてないよな?」
「確かめてみる?」
「おっとそこまでだ。それ以上続けたらセクハラとみなして輪切りにするぞ」
机の上にあったカッターナイフを手の中で回して弄びつつジト目で睨むと、コムイがひぃぃぃぃ、と震え上がった。
「ううう…………子供が出来なくなったらどうしてくれるんだい!」
「あぁ? じゃあそうなったら責任とって婿に貰ってやるよ」
「ぶっ」
あ、書類…………
茶色の噴水を浴びた書類を他人事のように眺めた。実際他人事だ。
「そもそも突然人を押し倒すお前も悪いだろ」
あれは反射的なもんだ。
「うちの六幻流は眠らないんだよ」
「? 眠らない?」
「無意識下でも対応できるようにって、ガキの頃から仕込まれてる。一対多数想定してるし、眠ってようが気絶してようが反射で動いて攻撃できるようになってる」
「何その対人兵器!」
今度は肩を抱いてコムイが震え上がった。
「まぁでも、お前が言ってる事は理解してるんだ。俺だって道場で男と乱取り稽古してるけど、多分手加減されてると思うし」
俺の相手は必ず先に気絶する。
気絶する前に本気でやって欲しいんだがな。
「…………釈迦に説法、失礼致しました」
コムイは溜息をついた。
「あ、そういえば。あの赤毛様子どうだ? 面会謝絶って聞いてるが」
「ああ…………酷いもんだよ。ヒビが本当の骨折になっててね。彼も少しは懲りただろう。これで少し治まってくれればいいんだけど」
「?」
「今回の騒動の原因。聞いてない?」
「知らねぇ」
「東校のなんていうのかな、リーダー役みたいな生徒の彼女を取ったとかなんとか…………」
「…………」
…………。
何か今猛烈に後悔してきたぞ。あれか、俺は痴話喧嘩に巻き込まれたのか。
アホ臭ぇ…………
「その手の話は枚挙に暇がないからね。僕としてはそのうち刺されるんじゃないかってヒヤヒヤしてたから…………」
「いいお灸になったんじゃねぇのか?」
「忘れないでね、君もだよ」
「分かってる」