「「「あ」」」
昼休み。
教室の喧騒から離れたいが為に体育館の裏という誰も来そうに無い場所で一人弁当を広げかけていた俺は、タイミングよく同調した三つの声に振り向いた。
「げ」
そこにいたのは…………白黒金のなんともいえない目立つトリオ。昼飯にしようとしていたのは奴等も同じらしい。その手にパンやら何やらを抱えている。約一名、量が異常なのは見て見ぬフリをした。…………関わり合いになりたくない。
「なーにお前こんなトコでメシ食ってんだよ。便所飯よりはマシだけどさぁ」
「うるせぇ。人が何処で飯食おうが勝手だろうが」
「もうちょっといい場所あるんじゃないですか? 屋上とか」
屋上はお前らが使ってるんだろうが。
「ヒヒッ、弁当!? 見せて!!」
「あ、こら」
人の弁当の蓋勝手に開くな、金髪。
「へー…………美味しそうだけど、ちょびっとしかないね…………」
「女の弁当みてーだな」
デビットが割と的確な事を言った。
だがそれは知られては困る事なので、無言で弁当を引っ手繰る。
「喧しい。お前らなんざとっとと屋上でも保健室でも行ってろ」
「うわ酷!」
「折角ハブられっ子のお前と一緒にメシ食ってやるって言ってんだからそう邪険にするなよ」
いつ言った。
そしてんな事頼んでもねぇ。
奴らは勝手にそれぞれ昼飯を広げ、その場に座り込んで食べ始める。
「…………赤毛はどうした?」
「お前その赤毛ってのはやめろよ。ラビなら今通院中」
「鎮痛剤は流石に通院しないともらえないんだって」
「…………へぇ」
まぁ、それもそうだろうな。
「ねぇねぇ、この卵焼き頂戴っ!」
「あ、こら!」
ジャスデロがひょい、と人の弁当から卵焼きを奪い取って口に放り込む。
「あ、しょっぱい」
「何だと? お前、卵焼きは甘いのが普通だろうが!」
「何処の普通だ。そしてお前の好みを俺に押し付けるな」
「白だしでも使ってるんですか?」
「…………てめぇモヤシ、何人のとってやがる!!」
ジャスデロに文句をつけている間に横からモヤシが勝手に人の弁当の中から勝手に卵焼きを盗って行く。
「はて、モヤシって誰のことですかー? 少なくとも僕じゃないですよねー? 僕にはアレン・ウォーカーっていうちゃんとした名前があるんですからー」
「てめぇ…………っ!」
怒りの余りわなわなと震える拳を握り締める。
とりあえずモヤシの顔目掛けて正拳突きをかますと、あっさりと、それはもうあっさりと片手で受け止められた。
「びっくりした。…………君やっぱり力無いですよね」
「五月蝿ぇよ!」
「アレンが馬鹿力なんだろ?」
「いやこれは二人でも勝てるレベルですよ、全然」
悪かったな力無くて!!
これでも鍛えてんだよ! 少なくとも女の中じゃ強い方だ!!
「そーなのかよ? おい神田試しに俺と腕相撲してみようぜ」
「誰がやるか!! っつーか、飯食わせろ!!」
こいつらに付き合ってたら昼休みが終わる!!
弁当死守と、妙に纏わりついてくる三人に辟易していた俺は気付かなかった。
校舎三階、職員室から、笑みを湛えて俺達を眺めているコムイの存在など。
「…………疲れた」
何故飯食うだけにあんなに体力使わなきゃならねーんだ。
弁当を三馬鹿トリオから死守し、それから食べ終わるなり腕相撲の勝負を挑んできたジャスデビの相手をし…………
すっかり疲れてしまった。
ちなみに勝負の結果は、デビットには負け、ジャスデロには勝った。
最下位じゃなかっただけマシだが…………デビットとモヤシに随分痛めつけられた。使った右腕の二の腕辺りが、筋肉痛をもっと酷くしたみたいに痛む。
…………修行あるのみだ。
俺は一人で頷いて、今日の修行内容に筋トレをいつもの2割り増しで含めることに決めた。