「君って根本的に惜しい人ですよね」
「あ?」
初めての奴等の昼飯時の襲撃から一日。つまり翌日。
念の為と、今度は体育館裏から滅多に人の来ない校舎の裏庭に居た所、俺はまたしても三馬鹿トリオに襲撃された。
そして問答無用で奴らは其処で飯を広げ、勝手に食い始めた。
文句を付けたところ返って来たのは「俺達が何処で飯食おうが勝手だろ?」という世にも可愛くない返事だった。
こいつら俺が先輩だって事忘れてるな。若しくはその事実を無視しているに違いねぇ。
「何が?」
「付けてくるもの、間違ってますよ。全く、女の子だったら良かったのに」
おいこらモヤシ、わざとらしく嘆息するな。
そして俺は一応女だ。
「あー、女の子だったらなー。惜しいなぁ」
「…………惜しいってだから何がだよ」
さっきから背筋が寒いぞ。
「ヤり捨てるには勿体無いですし。お嫁に貰ってあげる所ですが」
「お前なんか死んでもお断りだ」
「いや僕だって男の君は無理ですよ? イヤですよ?」
何つー事言ってんだこいつ。
誰がお前なんか嫁入りするかバーカ!
「神田が女だったら、お前っつーかどっちかっつーとラビの好みっぽい気はする。あいつ結構気の強ぇ女好きじゃん?」
「あー、いえてます。僕は大人しい子が好みです」
今すぐ黙れお前らの女の好みなんざ俺の知ったことじゃねーよ馬鹿。
「神田はどういう子がタイプ?」
「…………」
おいジャスデロ。俺に振るな。
そしてあとの二人。期待顔でこっちを見んな。
好みなんかあるわけねーだろが。
「別に…………何でも」
「染色体ダブルエックスなら誰でも良いってか? そりゃアレンやラビよりも性質悪ぃぞ」
違うわ!!
「デロは、デビと同じお嫁さんがいい!」
手を上げてジャスデロが発言する。
…………一妻多夫って…………駄目だよな…………?
「だよなジャスデロ!」
「ね!」
「ね、じゃなくてそれは無理なんじゃ」
モヤシが引き気味に呟いた。考えた事は一緒だったらしい。
「妥当なトコだと俺達みたいな双子の女と結婚するとか?」
「ねー」
…………どーでもいい…………。
「で、神田。じゃーこん中だったらどいつが好みだ?」
バッ
俺の目の前でデビットが、変形しきってしかも鋲やら何やらが付けられて改造された鞄から取り出した薄い本を広げた。
フルカラーの、そして色で言う所の肌色のそれに一瞬それが何だか理解できない。
「? …………!?」
だが、脳に入ってきた情報を整理し終わると、危くそれまで口にしていたウーロン茶を噴出しそうになった!!
なっ…………これ…………っ!
「何ですかそれ? ああ…………エロ本…………モザイクなしって珍しいですね。裏モノですか?」
隣から覗き込んできたモヤシが至極何でも無い事のように言う。
「そーそー。珍しいから買ってみた。見るか?」
「や、いーです。僕は生身の女の子の方が好みですから」
…………な、なっ…………、
「デビはあんまり好きじゃない…………」
「おう、知ってる知ってる。お前には見せないから安心しろ!」
俺にも見せるな!!
目の前に差し出されたままのそれに、どうしていいか分からない。
目を背けることも出来ずに俺は硬直した。
こんな時男だったらどんな反応するんだ? 喜べばいいのか? いや違う、こいつら好みの話してたから…………っ
「で、どーいうのが好みだ?」
…………!
生々しい、男女の契りを克明に映し出したそれへの嫌悪感に震えそうになる手を叱咤して本を受け取り、なるべく中身を見ないようにしながら適当に頁を捲り、相手に付き返す。
「え? これか? うわ意外…………」
「え、どれです? …………ああこれは意外ですね。金髪巨乳…………」
知るか!!!
「そーいうの興味アリマセンって涼しそうな顔しといてお前好み結構ガッツリ派なんだな、意外だなオイ」
「僕はこっちの方が好みです」
「あー、如何にもお前好きそうだな。俺はこっちの方が…………」
答えた事により俺は尋問から逃れ、顔を背けて溜息をついた。
…………気持ち悪かった…………。
ふと視線に顔を上げると、矢張り会話の中に加わっていなかったジャスデロが何ともいえない微妙な顔で俺を見ていた。
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