ザァァァ――――――


「…………ふー」

 流石私立。
 男女別に分けられたシャワー室はブースに区切られていて、胴の部分だけ隠すくらいのドアがついている。
 しかもご丁寧にボディーソープ、シャンプー、コンディショナーまで据え付けられていた。…………石鹸だけで十分だろ。
 五時間目も諦めた事だ。折角なので体も洗っていく事とする。
 
 因みに今俺が使っているのは男子用シャワー室だ。女子用を使っていて万が一他に利用しに来た奴がいたらそれはそれは面倒だからな。運が良くて痴漢扱い、運が悪ければバレる。…………どっちが運が良くて悪いのか、微妙な所だ。
 運が良い事にこの時間帯は体育の授業が開講されていないらしい。


 コンコン


『神田ー? いるー?』
「ああ、此処だ」

 ジャスデロの声がした。
 声を上げて、奴を呼び…………


 ――――――キュッ


「…………、…………ん?」

 奴を呼んで…………?

「ヒヒッ! 神田ぁ、服とタオル持ってきたよ!」
「う、わ、く、来るなっ!!!」

 呼んだら不味いだろうが俺の阿呆――――――!!!

「? 神田? …………?」
「…………!」

 俺の制止は間に合わず、ジャスデロはひょい、と顔を出した。
 暫し俺は奴と睨み合う。
 いや正しくは俺は奴を睨み、奴はポカンとした顔で俺を見ている。

「…………?」
「…………、」
「…………?、?」
「…………、」
「…………!! わっ!!」
「!」

 暫くの後。
 漸く気付いたらしい奴が(視線が俺の胸辺りに来てたから間違いないだろう)、大慌てで手足をバタバタ動かした。

「デ、デビ――――――! デビ――――――!!」
「…………っ!!」


 バタンッ!!

 ガッ!!


「…………!!」

 ブースから飛び出した俺は、ジャスデロの首根っこを押さえて壁に縫いとめた。
 じたばたじたばた暴れるジャスデロの首を押さえる力を少し強める。

「やかましい! 静かにしろ!!」
「…………むー!むー!!」

 俺に言われたとおり静かにする為か知らんが奴は自分で自分の口を押さえ、そして喚いている。
 どうしても叫びたいのかお前は。

「…………」
「…………」
「…………。神田、前は隠したほうがいいと思う…………」
「!!!!」

 そういや俺素っ裸じゃねぇか!!

 慌ててジャスデロの首を押さえていた手を放して、自分の胸を庇った。
 そんな俺に、ジャスデロは持ってきたタオルを頭から掛ける。

「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇよ…………」

 ドッと疲れてしまった。
 物言いたげなジャスデロに溜息一つ吐いてから、

「取り合えず着替えるから、あっち向いてろ…………」







「…………という訳だ」
「大変だね…………ヒヒッ」

 着替えた俺は体育館に出て、其処で待っていたジャスデロに事の成り行きを説明した。

「いいか、だから誰にも言うんじゃねぇぞ。コムイ達の給料が掛かってんだ」
「他の先生のはどうでもいいけど、コムイ先生のは良くないね!」

 慕われてるんだなあいつ。

「…………でも、駄目? デビに言っちゃ駄目?」
「駄目だ。あいつどう考えても口軽いだろ」
「…………」

 反論できない辺り実際そうらしい。
 だがデビットが知れば芋づる式にモヤシとラビの耳にも入るだろう。
 そこまで広まればもう隠している意味がない。
 
「…………分かった…………デビにも内緒にしとく…………」

 不承不承、と言った顔でジャスデロが頷いた。
 
「…………でもなんか、面白いことになりそうだね」
「?」

 含みのある台詞の意味は今はまだ知れなかった。






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