成程奴らが面倒だと言っていたのも良く分かる。
臨海「学習」とは名ばかりで、単に遊びに来たに近いような二日間だ。行程表を見ながら思わず嘆息する。何だ、「西瓜割り」「花火」「ビーチバレー」って。小学生の夏休みか。
なるべくならパスしたい内容だ…………。
「着替えたらビーチ集合だってさ」
「ああ」
部屋に入り荷物を置いていると同室のラビがそう伝えてきた。まぁ言われるまでも無く聞いている。バスの中でアナウンスがあった(ラビはその時寝てた)。
ホテル目の前の一帯はこのホテルのプライベートビーチらしい。そして、今回この臨海学習の為にホテルを丸ごと貸しきってるという話だ。
そうじゃなかったら高校生が水着でホテル内をうろつけるわけがない。
「あー、眠。まだ寝てたいんだけどなぁ」
ラビが欠伸をしながら窓側のベッドに荷物を放り出した。
思う存分好きにしろ。
俺の知ったことか。
着替えを一纏めに手にして、風呂場に向かおうとした所。
「あ、そうさユウ」
「?」
呼び止められ、振り向いた時。
目に飛び込んできた色に一瞬硬直して、それから慌てて後ろを向いた。
「テメェ、着替えてんなら人呼ぶな!」
「はぁ? 何言ってるんさ野郎同士で…………」
…………下を脱いでなかっただけ、マシだろう。
とんでもないものでも見せ付けられてたら、今頃奴を血の海に沈めてたかもしれない。
「何、俺の肉体美に惚れちゃった?」
「アホか」
「思う存分見るがいいさ」
「自意識過剰だ死ね」
そしてわざわざ見せ付けに来るな!
「アレンほどじゃないけど俺だって鍛えてるんさぁ」
「ああそうかよ。お飾りの筋肉って奴だな」
見る目的だけの。
ボディビルダーがいい例だ。確かに筋骨逞しいが実戦向けではない。
それは俺達武道を修める者が目標としている所とは違う。
「うわ、酷。失礼さ。ユウなんてガリガリじゃん」
「だれがガリガリだ」
俺は青いアイスか。
「だって手首だってこんな細いし」
「!」
言いながら俺の手首をラビが掴んだ。
「ほら、一周してもまだこんなに指余る」
「放せ!」
んなトコに筋肉付くか!!
「つか、マジで細いさ…………これ骨? 女の子みたい」
「!」
やべっ…………!
ジャスデロの時の二の舞…………!
無理矢理大きく手を振って振り払い、奴を睨みつけてから俺は風呂場に逃げ込んだ。
「…………あいつ、風呂場で何するつもりさ…………?」
着替えて風呂場から出てきた時にはラビの姿は無かった。
時計を見ると、集合時間までもう間もない。先にビーチに出たんだろう。
何処の部屋からも似たり寄ったりな格好の奴らが飛び出してきて、一目散にフロント、そして外を目指して走っている(うちのクラスは遅刻者へのペナルティはコムイの新薬実験台と相場が決まっているため、皆必死だ)。俺も其れに倣って、走り出した。
ビーチには既に列が出来ていた。
男女に分かれていたため俺も男子列に並ぶことにする。少し離れて前のほうには目立つ紅い頭もあった。
他のクラスの奴らはまだ半数も居ない。
「うんうん。何時もうちのクラスの子は時間厳守で感心だね!」
お前からのペナルティが怖いからな。
多分今、全員の考え一致したんじゃねぇか?
「じゃー、女子はB組の女子と合同だから、ミランダ先生の指示に従うこと。男子はB組の男子と合同だよ。僕が指示するからね」
成程。
男女別に別れるのか。
教職員は男女半数ずついるらしいから、二クラス合同は納得できる。
「じゃあ皆、しっかり準備運動するんだよ〜! 分かってると思うけど沖には出ないこと! 以上!」
まさか指示ってそれで終わりか?
コムイが言い終わるなり、周囲の奴らは海に向かって駆け出していった。
準備運動…………
「聞いてないなぁ、もう」
コムイの声が、のんびりとした響きを持って聞こえた。
小説頁へ