「…………あれ?」

 遅いから、部屋においてった同室者。
 その姿を見て俺は思わず首を傾げた。

「何、その格好。泳がないんさ?」

 ユウの格好は、俺達みたいな水着ではなく、シャツにパーカー(暑そうさ)、そして膝までのショートパンツ。
 どこからどうみても、着衣水泳でもやるんじゃなきゃ泳ぐ姿ではナイ。

「…………」

 俺が話かけると少し嫌そうに眉根を上げ(失礼な奴さ)面倒臭そうにユウは答えた。

「泳げないんだよ」
「え…………まさかのカナヅチ?」

 運動神経抜群なイメージなのに。
 実際、体育の授業でユウの活躍は目覚しい。
 サッカーなんかやらせようもんなら、ユウにボール取られた=点入れられるの図式が立つくらいさ。つまりは引退したサッカー部員の面目丸潰れ。

「違ぇよ。肌弱ぇから、海水に入れない。診断書コムイに出してある」
「…………」
「…………」
「何、そんなに繊細なんさ?」
「うるせぇ」

 …………確かに、まぁ。
 野郎だとは思えない位肌も白い。
 ショートパンツから見える足だって、無駄にツルツルだ。

 …………これで男なんだよなぁ…………世も末さ。

「つー訳だ。とっとと行けよ」

 シッシッ、とユウは俺を手で追い払い、それから踵を返して岩場のほうへと歩いていった。

「…………変な奴…………」








「神田ってさぁ、なんかこう…………詐欺みたいだよな」

 成り行きで組んだグループの一人がそう言った。

「詐欺って何だよ詐欺って」
「あれで男だろ? 信じらんねぇ」
「あの格好、女子みたいじゃねぇ? ほら海入れない子、ああいう格好じゃん」
「本当さ」

 水の中から砂浜のほうを見ると、同じような格好をした奴ら(大半は女の子だった)が呼び集められていた。
 水に入れない組なんだろう。

「あはは、マジだ。見分けつかねー」

 ケラケラ笑いながら一人が指差す。

「あれで男だもんなぁ…………」

 …………残念な奴。






 指示らしい指示ではないが俺達は「危なくない程度に勝手にしろ」との指示に従い、各々水際を歩いたりと好き勝手にし始めた。
 適当に岩場にいた小さな蟹を捕まえては放してみたり、とどうでもいい事をしていてふと気が付いた。
 もう暫くいった辺りがまるで丘のようになっている。いや丘ではなくて大きな岩か?

 暇だし行ってみるか。

 岩場から離れ、俺は一人その丘を目指した。

 …………のは、いいのだが。
 丘の上には特に何も無かった。
 石が転がってるだけだ。結構高さがあり、先の方に行くとまるで崖のようになっている。
 意味無かったな。まぁ暇だから構わないんだが。

 潮風を受けて、そして明るい陽光が水面に反射するのに思わず目を細めた。
 …………こんな事で訪れたのでなければ、少しは良いと思えたのかもしれない。

「あっ…………」
「?」

 突然、後ろから女の声がしたから振り向いた。
 そこにいたのは、水着を着た女。
 …………? こいつ…………、

「ね、ねぇ神田君っ」

 俺の隣の席の奴だ。

「何だ?」
「海、入らないの?」
「…………」

 入らないんじゃなくて入れないんだ。
 仕方ないだろ、水着なんて着れる訳が無い。

「行かねぇ」

 短く応えると、目に見えて目の前の奴は落胆した顔をした。
 んな顔されてもな…………。

「じゃ、じゃあ、」
「――――――あっ!!」
「!」

 何事か続けようとした時。
 後ろからやってきていた、他の女の集団が、非難めいた声を上げた。




 小説頁へ