…………どうしてこうなった。
俺が呆然としている間に、その集団は最初に居た俺の隣の席の女に何事か言い募り喧嘩になっている。
多勢に無勢の割には、奮戦してる。
だがしかし…………どうしてこうなった。
口を挟もうにも挟めない雰囲気だ。
「お、おい」
「――――――の癖にっ!」
「きゃあっ!」
――――――それはほんの一瞬だった。
突然突き飛ばされてこっちに倒れてきた奴に突き飛ばされる形で、俺も体勢を崩す。
咄嗟に左を軸足にして、後ろで踏みとどまろうとして――――――だけどそこには「何も無い」。
視界に、俺が離れた崖の先端が焼きつく。
ざわり、と二の腕が粟立った。
「あ、」
受身、取らねぇと、
「「「「「きゃあああああっ!!!」」」」」
「 !」
着水した瞬間、背中に衝撃を受けて咳き込んだ。
その瞬間、水が入ってきて意識が遠のく。
海に落ちて行ったのか、空に落ちたのか、良く分からなかった。
ただ、赤い太陽みたいな光がキラキラ光って見えて、それがとても綺麗だと。
そう、思った。
「あれ? あいつら、」
「何やってんだ? 立ち入り禁止だろあの辺」
ビーチボートの上に乗ってボーっと水面に浮かんでいると、近くからそんな会話が聞こえてきた。
「女子? と、ああ、あれ神田?」
「危ないな、あそこ崖だろ。何やってんだよあんなギリギリの所で」
…………?
「神田」。確かにそう聞こえた。
光に痛む目を開けて、奴等の視線の先を見ると其処には確かに腰まで届く黒髪の奴が、あと少しで海に落ちそうな、そんなギリギリのところにいた。
危ねぇな…………。
大体、上に居る奴らは気付いてないんだろうけどあの崖は、正面から見ると窪んでいて先の辺りには強度が余り無い。だから立ち入り禁止にされてるんだろう。(俺は聞いたこと無いけど、多分一年のときにでも説明があった筈だ)
ユウも三年からの転入生だ。そんな事知りもしない筈。
「…………しょーがねーさ、」
落ちでもしたらまた大事だ。
その前に気付くと思いたいけど。
「ラビ? どうしたんだよ?」
「ちょっと行ってくる。あの調子じゃ危ないって、知りそうにないし」
ビーチボードの上から滑り落ちて水の中へ。
崖の近くから上がれるように、そっちへ向かって泳ぐ。
そして、もうじき浜に上がる――――――そんな時だった。
『きゃああああっ!!!』
甲高い、女の子の悲鳴。
それから。
ザンッ!
それから、大きな物が、何処かから水に落ちてきた、そんな音。
…………まさか。
咄嗟に水に潜り、痛む目の抗議を無視して水の中で目を開く。
俺が来た方向の、水深が深いあたり。
そこに、長い黒髪が広がっていた。それはゆっくりと水底に向かって落ちていく。
「…………!」
変だ。
水に落ちたのに、もがく様子が無い。
まさか、意識が無い――――――!?
慌てて水を蹴って、助けに向かった。
背と腰を抱えた時に見えた顔は、目を閉じていてまるで生気を感じない。
意識の無い人間の体に格闘しながら何とか水面に引っ張り上げても、ウンともスンとも言いやしない。
「おい! 起きろ!!」
「…………」
「…………っ!」
唇が、青い。そして、吐息も全く感じられない。
――――――これ、かなりヤバいっ…………!
「っ!」
無理矢理引き摺るようにして、俺は必死に浜を目指した。
小説頁へ