「あいつ、家でもあんなんなのか?」
「?」
「デビットだ。自分の家でもこんな感じなのか」
「うん…………」

 掃除機をかける前にとりあえず大きなゴミを回収する。ビニールやら紙ごみやらを燃えるゴミ袋に次々に放り込み、不燃物は専用のごみ袋に放り込む。ともかく食い物の袋が多い。多分モヤシの所為だな…………。
 しかもかさばるペットボトルも多くて本当に始末におえない。
 双子の癖に其処は似ないんだな。
 本と雑誌は似たようなものを一まとめにする。流石にこれは所有者の許可無く捨てる訳には行かない。

 …………うわ、

 床に落ちていた一冊の雑誌に、思わず視線を逸らした。上半身裸の女が表紙で其れがどういうものなのかは容易く想像がつく。
 男ってのは…………。どいつもこいつも…………

 理不尽なのかもしれない事を考えながら、裏返した雑誌を雑誌の束の一番上に重ね、俺は先に家具を拭いていたジャスデロの方へ声を掛けた。

「拭き終わったら声掛けてくれ。掃除機そっちからかけ始めるから」
「ヒッ! 了解!」

 振り向いてビッ、敬礼したジャスデロは何やら手の跡がべたべた残るテレビの画面を拭く作業に戻った。俺は回収したペットボトルからラベルを剥がし、そして蓋を取る作業を続ける。
 それから俺とジャスデロは二人で大掃除を続け――――――

 二時間ほど経ったころには、見違える程リビングは綺麗になった。

「ふぅ…………」
「綺麗になったね!」

 これなら充分寛げるスペースだ。
 まさか人ん家来て大掃除するとは思わなかったが…………

 奴らを呼び戻そうと、俺達は奴らが消えていったドアへ向かいその前に立つ。
 ドアノブに手を伸ばして――――――中から聞こえてきた声に、俺とジャスデロは凍り付き、そしてギギギ…………と音がしそうな程の不自然な動きで顔を見合わせた。

『あんっ、あん、ああんっ…………そこ、あん、もっとぉ…………』

 …………あ、いつら…………

『あっ、あっ、あ、イくっ、イくイく、イッちゃうぅー!!』

 甲高い女の悲鳴。
 思わず無言で耳を塞ぐ。

 …………昼間から何見てんだよ!!

「「…………」」

 くるりと踵を返して俺達はドアの前から離れた。
 あんなもんを延々と聞かされて堪るか。

 音が聞こえてこないようにするためこっちもリビングのテレビの電源を付けて適当な番組を流す。

『…………! …………!! …………!!!』

 畜生まだ聞こえてきやがる!
 隣を見るとソファーの上で膝を抱えていたジャスデロは硬く目を閉じて耳を塞いでいた。…………こいつ俺以上にこういうの駄目なのか?

「おい」
「何?」
「此処の冷蔵庫。中身あんのか?」
「ヒッ? うん、昨日買い足したけど…………」
「昼飯でも作るか?」
「うん!」

 台所にいれば流石にこんな声も聞こえてこないだろう。
 テレビの電源を落として、俺はジャスデロの先導で台所へ向い、そして一人暮らしの割にはでか過ぎる冷蔵庫の中を二人で覗き込んだ。

「何がある?」
「えっと…………」









「…………何やってんの?」
「見たら分かるだろ。昼飯作ってんだ」

 コトコトと鍋の中身を煮立てながら俺は出てきたラビを振り向いた。ちなみに隣でジャスデロが大鍋一杯に湯を沸かしている。そしてその隣には山と積まれたパスタ。本日の昼飯はミートソースのスパゲッティだ。

「ああ、勝手に使ったぞ」

 ジャスデロが勝手に使っていいもんだっつったからな。
 良くなかったら材料費回収して買いなおせばいいだけだし。

「そりゃ全然構わないんだけどさ。へー、あんがと。リビングもすげぇ綺麗だし」
「折角綺麗にしたんだから汚すなよ。それから、あともう少しで昼飯になるけど。…………お前らはもういいか?」

 暗に「ビデオは終わったか」と聞くと、ラビはへらりと笑った。
 隣のジャスデロが大鍋にバサバサとパスタを放り込んでいく。

「うん、まぁね〜。どうせならユウも見れば良いのに」
「いらねぇよ!」

 誰がそんな気色悪いもの見るか!!

「えー? 健全な男の子としてそれはどーかと思うさぁ」
「五月蝿ぇ」
「え? 何? 不能?」
「黙 れ」

 いい加減にしねぇとセクハラで訴えるぞこいつ。

「金髪巨乳が好みなんだって? あるよそういうの。洋モノだから何言ってるか分かんないかも知れないけど」
「…………だから、あのな…………」

 何が哀しくてんなもの見なきゃならねぇんだよ…………。

 溜息をついてから、

「馬鹿なこと言ってないで、奴ら呼んで来い。そろそろだぞ」



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