「おいお前ら、戻ったぞー」
「お帰りー」
「アイスください」
「労いなしかよアレン!」
十五分ほどして二人が戻ってくるなりモヤシが突撃していった。
腕に抱えきれないくらいのアイスを抱えて幸せそうだが…………、溶けるぞそれ。
「神田はこれな。ラビはこれ」
「あ、レ○ィー○ーデン? 俺ハー○ン○ッツのが好きなんだけど」
「我侭言うなよ、高いんだぞそれ」
「ハー○ンだったら小さいカップあったのに。まぁ頂くさ」
ラビは一人分ではなさそうな、大きいカップを一人で抱えた。
俺は棒状のバニラアイスを寄越される。
棒のだし、早く食べないと溶けるな…………
包み紙をぺりぺりと剥がして、既に自分達の分を食べ始めている奴らに混じり俺も口を付けた。
「…………ん、む」
「「「…………」」」
その図は普通に何処にでもありそうなもんさ。
男子高校生がアイスを食ってる、っつー…………
…………だけどそれがユウってだけで、何でこんなにヤバいんさ!?
「「…………」」
思ってることはデビットもアレンも一緒だったみたいで、自分のアイスを食べることなんてすっかり忘れた顔で呆然とユウを見ている。アレンの握っているスプーンから床へ溶けたアイスがぽたり、と滴り落ちた。
「ヒッ! 神田、後ろ側溶けて来てるよ!」
「む、」
ああああ止めるさジャスデロ、そういう事言ったら…………!
案の定ユウは紅い舌をちろりと覗かせて、アイスの表面を伝う白い滴…………というか溶けたアイスを舐め取った。それにアイスの太さが絶妙にアレを髣髴とさせるサイズなのがまた…………
ふと、朝見たビジョンが脳裏に鮮明に蘇り、じわり、と下半身に熱が集まるのを感じた。
思わずごくり、と生唾を飲み込んだのは本当に俺だけだったんだろうか?
だが俺が阿呆な事を考えている間に、ユウは自分の一番小振りだったアイスを食べ終えて、それから動かなかった俺達を怪訝な目で見た。
「…………何見てんだお前ら」
「「「!」」」
「あ! おいモヤシ、テメェ何床汚してんだ!! 昨日掃除したばかりだろうが!!」
「あ? え? …………へ? あ――――――! 溶けきってる――――――!」
ユウに怒鳴られ、慌てて自分の手元を見下ろしたアレンは手元の小さなカップの中を覗き込んで悲鳴を上げた。ストロベリーアイスは見事にただのピンクの甘ったるい液体になっている。…………元々暑い中買って来たから、溶け始めてたからなぁ…………
俺のアイスも何やらユルい感じだ。もう一回凍らしておこうかなー…………。
「ったく…………あーあお前ズボンも汚してるし…………」
「へ!? あー!!」
「手間掛けさせんな、脱げよ」
「「「「え」」」」
…………え、今、ユウ何て?
「…………え?」
「え、って何だえ、て。脱がなきゃ洗えねーだろ? 染みになるぞ」
「それは困ります…………けど…………」
アレンは部屋の片隅に干されている自分の替えのズボンを見た。
夏休みの殆どを此処で過ごす予定だったアレンやジャスデビは其れほど着替えを持ってきてなくて、昨日だって俺達が全く洗う気も無くて放っておいた洗濯物を見てユウが洗濯してくれたくらいさ。どうやら今日着てるのが最後の一枚だったらしく、
「あの…………あっちがまだ乾いてないんですが」
「夏だしそのうち乾くだろ。別に男なんだからいいだろ?」
「いえ!! 駄目ですたった今!!」
…………たった「今」?
…………まさかアレン…………
「バスタオルでも巻いてりゃいーだろ。脱げ!!」
「や、止めてください! やーめーてー!!」
裾を引っ張って脱がそうとするユウに、アレンはベルトの辺りを押さえて必死の抵抗を始めた。
何やら倒錯的なシチュエーションに見えるのは俺だけ? ねぇ俺だけ?
「いいぞー、やれやれー!!」
デビットは面白がって二人を尚更煽り、その隣でジャスデロは困ったようにうろうろしていた。
「ヒッ…………」
「せめてバスタオル持って来てからにしてくださいってば! やーめーてー!!!」
「ア、アレン。俺のでよきゃ貸すさ?」
俺がそう助け舟を出すと、アレンが飛びついてきた。
「是非貸して下さい!」
「ラビの? どう考えてもお前それ、」
ユウがアレンを足元から頭まで見回して、それから俺を見た。
「裾引き摺るだろ。チビなんだから」
「チッ…………」
…………ああ、ユウがまた言っちゃいけないNGワードを…………
「誰がチビですか!? この女顔!!」
「あ? テメェ喧嘩売ってんのかコラ!」
…………始まった…………。
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら何故かズボンの取り合いと殴り合いが始まり、俺はその喧騒に笑うしかなかった。
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