文句を言いながら、ユウの傍らの土手に腰を下ろす。土がつこうがどうでもいい。
 人の群れの中を右往左往し、ようやくユウを見つけたのはもう花火が始まってから一時間くらい経った頃。
 …………本当は、其れより少し前に見つけてたんだけど。

 …………言えない、見てたなんて。
 ほんの少しの不安を滲ませた顔。
 もう少し見てたかった、なんて…………言える訳が無い。
 
 だけど見ていたいなんて思った理由は怖くて考えられなかった。
 俺はノーマルのはずさ。
 こんな胸の高鳴り、認められるわけが無い。
 
「女の子とくればよかった…………」

 思わず呟くと隣に居たユウが「今何か言ったか?」という顔でこっちを見た。それに、なんでもないよと首を振っておく。
 ユウは不思議そうな顔をしてから空を見上げた。パッと咲いた光の花が、ユウの澄んだ黒い瞳に映る。その様から、目を放すのは惜しくて、だけど見てはいられなくて。 

 ふと周囲に視線をやれば、あからさまな憧憬の色を滲ませた野郎共が色めきたってユウを見ていた。
 …………おいおい、こいつ男さ? お前ら何、ソッチ系のヒト?

 〜♪ 〜〜〜〜♪

「?」
「あ、電話…………」

 繋がったんか…………

「はいはい?」
『あっ! ラビ捕まりました!』
『お、やったな』

 電話の向こうからアレンとデビットの声がする。
 あっちは無事に合流できたらしい。

『どうです? 見つかりました?』
「うん、ばっちり。無事に迷子捕獲したさ」
「おい」

 隣のユウが不満そうな声を上げたけどスルーさ。

『あー、良かった。とんでもないとこ行ってたらどうしようかと思いました』
「ふっつーに河原にいたんさ。しかも何か座って花火見てたし」

 言いながらユウへ視線を向けるとユウは気まずげに顔を背けた。
 
『…………後で全員にカキ氷オゴリですね』
「伝えとくわ。取り合えず何処で落ち合う?」

 俺とアレンで合流場所を決め、隣を促した。

「行こ。皆待ってるからさ」
「…………ん」

 小さく頷いたユウと共に、階段の殆ど無い隙間を無理に通って道路に上がった。花火は丁度小休止を迎えていて、その所為だろうけど買出しらしい人の波が揺れている。

「わっ、」
「え? あっ!」

 後ろから小さく声が上がり振り向くと丁度人に押しやられる形でユウが右に流されてった。…………ああ、さっきもこうやって迷子になったんさね…………。

「あーもー、しょーがないさぁ」

 ユウの正面に来れるように俺も移動して、強引にその右手を取る。

「!」

 驚いた表情。

「もう一度迷子になられるのはごめんさ。離れないで」
「…………」


 握った手はやっぱり細くて小さくて、


 自分の手に汗かかないといいけど、などと少し現実逃避気味に思った。



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