「どーしたんですか? 黄昏て」
「…………うん…………」

 学校の昼飯時。
 夏に比べて大分涼しくなった風が頬を撫でていくが爽やかさとは無縁の気分さ。
 ジャスデビのクラスは体育だったから、まだ二人は姿を現していない。

「実は彼女に振られたんさ…………」
「え? 何でまた」

 驚いた顔をしたアレンに俺は事のあらましを説明した。ただし流石に、寝言とイく時に呼んだ相手がユウじゃ格好がつかないから、昔の彼女、って事にしておいて。

「あー…………それはラビが悪いですね。120%」
「…………やっぱり?」
「むしろ僕には、ラビが寝言で呼ぶほど未練残してた子が居たことにびっくりですけどね」
「…………」

 未練も何も無い。
 その相手とは何も始まってないし終わっても無い!

「まぁでもラビならまた直ぐいい子捕まえられるんじゃないです?」
「…………そりゃそうだけどさぁ」
「其処は否定しましょうよ。謙遜の美徳ですよ」
「お前が言うな」

 アレンと軽く言い合い、それから互いに昼飯のパンを一口齧る。
 
「いー加減これにも飽きが来たさ…………」
「本当ですね。…………そういえば神田どうしたんです?」
「あー…………なんか休みみたい。やっぱ腹痛いみたいだし」
「へー、何か悪いモノでも食べましたかね」
「さぁ?」

 昨日あの後、ちゃんと家に帰れるか密かに心配だったんさ。


 って!!! 違う違う違う!!
 俺はそんな事考えてない…………っ!


「何のた打ち回ってるんですか? クスリキメちゃった人みたいで気持ち悪いですよラビ」
「…………あい…………」

 アレンからドン引きの視線を投げられて、コンクリートから身を起こした。
 コンクリートに打ち付けた肩が少し痛む。
 起き上がって座り直し、空をボーッと見る。…………今日も晴れている。
 少しずつ高くなってきている気がして、そんな所に秋の気配を感じた。








「え? 俺が?」
「そう。神田くんの家の場所、知ってるでしょ?」
「そりゃ…………知ってるけどさ」

 帰り間際。
 SHRが終わった後、コムイにそう呼び止められて思わず眉間にシワを寄せた。
 コムイが手にしている封筒。提出期限が明日だというその書類。
 確かに誰かが持っていかなきゃ困るんだろう。しかしそれは俺じゃなくてもいい筈さ。それこそコムイが届けに行けばいいだけのこと。

「ついでに様子も見てきてくれないかい?」
「…………」

 そもそも俺の家とは方向が違う。

「あ、ジャスデロも一緒に行くって言ってたから、待ち合わせて行ってね」
「…………行くのは確定なんさね」
「そりゃ勿論。君ら、友達でしょ?」
「…………」

 友達。確かに、友達だ。
 だけど、その筈なのに、何故か少しだけその表現に違和感があった。
「じゃあそういうことで、宜しくね〜」
「…………あー、うん…………、分かった」






 結局ジャスデビだけじゃなくて勿論アレンも居て(むしろ一人だけバックれたとなれば地の果てまで追いかけて引きずってくるけど。いや俺にあの馬鹿力のアレンを引きずれる力があるかどうかは置いといて)
 ジャスデロなんかわざわざお見舞いだとか言って小さな花束を持っていた。

「どこで買ったんさ?」
「裏門から出て、ちょっと行ったところの花屋!」

 あー、そんなもんもあった気がする…………。

「えー? 普通お見舞いっていったらゼリーとかメロンじゃないんですか?」
「腹痛ぇっつってる奴に食いもんかよ。つかそれお前が食べたいだけじゃねーか」
「まぁそりゃそうなんですけど…………でも神田に花束、ねぇ…………?」

 アレンの顔にははっきり「似合わない」って書いてあった。まぁ確かに俺ら位の年代の男が花束貰ったとして嬉しいとは思わないだろう。
 女の子ならともかく。

「いーのっ! ヒッ!」

 ジャスデロが大きくてを振り回し、そして俺達は駅に向かって歩き出した。




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