「こないだ来たときは気にもしませんでしたけど、結構古い建物多いですよねこの辺」
「そうさねぇ…………」

 学校から数駅。
 ユウの家の最寄駅は、駅を出た駅前ですら静かな住宅街みたいなところだ。噴水がある小さな広場と交番が辛うじて駅前らしさを醸し出しているけど、それだけ。駅の目の前にある店は昔ながらの地元民を相手にしてるんだろうパン屋と弁当屋。この便利なご時世に、コンビニすら見当たらないとは…………。
 俺の記憶を頼りに道を行きながら、確かに重要文化財にでもなりそうな勢いの建物ばかり…………と周りを見回した。
 鬱蒼と茂る森だか林だかを横目にしながら、背の高い囲いが途切れた門の前に辿り着いた。分厚い木の板に達筆な筆で「神田」と書かれている。
 呼び鈴を押し、ジャスデロがインターフォンに向かって話しかけると程無くして着物をぴっちり着た(暑くないの?)ばーさんが現れた。

「まぁ、わざわざ遠いところを申し訳ないですね。中へどうぞ、せめて冷たい飲み物でもお出ししますから」

 誘われるままに俺達は敷地の中に入った。








 この間は直接道場に行ったから見てなかったけど、家の中も流石というべきな作りだった。
 多分家自体築ウン百年単位のもんなんだろうけど手入れは行き届いてるみたいで、柱も廊下も磨きこまれてツルツルでピカピカだ。
 ばーさんは沢山ある障子の中の一つの前に立って、部屋の中に声を掛けた。

「ユウ、入りますよ」

 中から返事は無かったけど、ばーさんは遠慮なく障子を開いた。
 俺達よりはずっと小柄なばーさんの背ごしに中を除く。
 …………返事が無かったのは寝てたから見たいだった。

「寝てます?」
「みたいさ」

 典型的な、それこそ旅館みたいな和室の部屋の真ん中には布団が敷いてあって、ユウはその中にいた。掛け布団で覆われた胸がゆっくり上下している。
 枕元には盆があってその上には水差しとコップ、紙袋があった。
 
「寝てるなら、これ…………」

 ばーさんに渡そうと、コムイから預かっていた封筒を渡そうとした。けど、ばーさんは一歩部屋に入ると帯の中から何かを取り出した。
 …………?

「え?」

 俺の隣にいたアレンが引きつった顔をした。

「ちょっ…………」

 デビットも慌てて声を上げる。

 ばーさんが握っていたのは、抜き身の短刀だ!

「ヒッ!?」
「ちょっ、まっ…………!」

 そして俺達の静止など一切功を成さず、ばーさんは容赦無くそれをユウに向かって投げた!


 ダンッ!


 投げられた短刀は深々と枕に突き刺さる!
 …………って、枕?

「あ、」

 え、ユウは?

「神田、」

 アレンの声に、その視線を追う。
 …………ユウは、たった今迄自分が寝ていた布団の脇あたりで、片足だけ膝立ちになって真っ直ぐ前を、ばーさんを睨みつけていた。

「…………」
「目覚ましよりも、こちらの方が早いわね」
「…………祖母様。何かありましたか」
「見ての通り、お客様ですよ」
「…………」

 ユウの視線はつつつ…………と俺達に向けられる。
 が、ある事に気づいてしまった俺は正直それどころじゃない。
 ユウの寝間着は白い浴衣。そんなんで膝立ちだから…………当然裾が割れてて、その、見えてる。白い足が。足首なんかは勿論、ふくら脛から、太もものあたりまで全部。
 辛うじて下着は見えてないんだけど、それが寧ろ残念さ。いっそ見えたらきっと萎えるのに!

「お客様にお茶をお持ちしますから、その格好どうにかなさい」
「!」

 ばーさんにそう言われるとユウは慌てて足を閉じてその場にへたり込む様に座り、ため息をついた。



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