着替えて起きる、そう言ったユウを止めたのはアレンだった。
「すぐ帰りますし、いいですよ。ねぇ?」
「あー、うん。お茶のんだら帰るしさ。まだ腹痛いんさ?」
「少しな」
ユウは布団の中に戻り半身を起こしている。
そんなユウからさり気無く視線を逸らしながら、アレンやジャスデロに向かって話した。
いつもと違い、髪を下ろしてるユウはその格好の所為もあるのか、その、妙に色っぽい。具合が悪い所為か儚くも見えて、まるで時代劇のお姫様みたいだ。
俺こんな事考えてるからフられるんさっ…………!
ってかよく考えたらユウの所為じゃん! ユウが男の癖にこんなに色っぽいのが悪い! うんそう、きっと俺は悪くないさ!
「そういえば…………何かあったのか? わざわざこんなとこまで…………」
「ヒッ! ラビが、コムイ先生から預かり物があるんだよっ! ヒヒッ!」
「預かり物…………?」
「あ、あー…………これね」
すっかり行き場をなくしていた封筒をユウの胸に向かって押し付けた。
俺に封筒を押し付けられたユウは、中の書類を引っ張り出して納得した顔をした。手元を見たから髪がさらり、と一束落ちる。
「? ああ…………申請書か」
進学のだ。
自分の志望校を書いて提出する書類。
「わざわざ悪かったな」
「…………どーいたしまして」
ユウはそれをしまい直して枕元に置いた。
「…………苦っ!」
「ヒッ!?」
俺達の横では、ジャスデビが出された冷緑茶に騒いでいる。
そんなに苦いんなら、砂糖でも入れてもらうがいいさ。
「でも明日学校行けるんですか? 提出期限明日ですよ」
「這ってでも行くから問題ねぇ」
「はぁ…………保健室のお世話にならないといいですね」
全員の手元を見た。
そろそろグラスはみんな空だ。
「…………じゃー、そろそろ行くさ。病人疲れさせても行けないしさ」
「えー? もうかよ」
「ヒヒッ!」
「帰りますよジャスデビ。どうせ明日顔合わせられるんですからいいじゃないですか」
「それもそうだけどよー」
「なら、見送りにでるか」
立ち上がろうとしたユウをまたアレンが止めた。
「だーかーらー、いいですってば。病人は大人しくしててください。道ならラビがいるから大丈夫ですよ」
「…………、」
「んじゃユウ、俺達行くさ。お大事に〜。ばーさんによろしく」
渋るジャスデビは首根っこを捕まえて無理やり立ち上がらせる。
二人はバイバイ、じゃあな、とそれぞれに言いながら大きく手を振った。
ユウはそれに応えて、小さく笑って、お腹のあたりで手を振った。
…………あ、
どく、ん、
これまで見たことのない、優しい笑みに。
心臓が深く掴まれる、痛みとは違う、だけど少し痛いような、そんな不思議な感覚がした。
「あれは男あれは男あれは男! よしインプット完了です!」
…………帰り道、ずっと俺の隣でブツブツ言ってたアレンについては、見えない振りをした。
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