「あれ? 神…………」
「…………」
「お? どうしたよアレン」
「あ、いえ…………今神田があっちに向かってったんで」
「あっち? 屋上じゃねーじゃん。どこ行くんだアイツ」
「ええまぁそれもそうなんですけど…………何だか、」
「?」

「何だか、泣きそうな顔してましたよ彼」








「神田…………?」
「…………」

 突然掛けられた声に背中が震えた。
 …………どうしてこいつはいつもいつも、タイミング悪いときに来るんだ。

「どうしたの? だ…………ヒッ!?」

 俺の前に回り込んできたジャスデロのセリフは途中で途切れた。
 情けない面を晒すのが嫌で、目元を乱暴に拭う。

「ど、どうしたの? どっかイタイの?」

 痛いのは、
 痛いのは、何処だ?

 痛むのは…………、

「っ…………」
「ヒッ…………」

 ジャスデロが俺の背中を撫でにきた。
 慰められる情け無さに再度頬に水が流れ落ちる。

 こんな水、早く流れ尽くしてしまえばいいのに。







「あー、三人とも遅かったさね…………ってジャスデロどうしたんさ?」
「あー…………」
「何か、神田追っかけて行きましたよ」
「…………ユウを?」

 ユウはついさっき、「コムイに呼ばれてた」って言ってどっか行っちゃったんだけど…………

「何かさぁ…………」
「ねぇ…………?」

 アレンとデビットは言葉を濁し、顔を見合わせあっている。

「何? どーかしたんさ?」
「…………いや、まぁ何でもねぇわ」
「…………?」

 二人の様子は露骨に「何かあった」顔だ。

「…………、そーいやさー、神田どうした?」
「んあ? さっきコムイに呼ばれてたっつって出てったけど…………」
「「ふーん…………」」

 伺うような目で二人に見られて、俺はそんな目をされる理由も何も思い当たらず首を傾げる。

「何? 何何、どしたん?」
「お前、神田と何かやらかしたか?」
「え」

 …………心臓が口から飛び出しそうになった。

 必死で自前のポーカーフェイスで誤魔化す。

「ユウと? 何もしてないさ」
「「ふーん」」

 何それ、何その信じてない目。

「あれじゃないですよね、彼女と別れて欲求不満のところで女顔の神田に何かしたとか」
「ちょ、ちょ、ちょい待ち? なんでそんな話になっちゃってんの!?」

 びっくりしすぎて声が裏返った。
 お前はエスパーかい!
 っていうか何もしちゃないけど!

「なんかさー…………泣いてた、んだっけか?」
「違います泣いては無かったですよ、泣きそうな顔はしてましたけど」
「え」

 …………何で?

「何か言ってないんですよね? 女顔とかちびとか」
「数センチしか変わらん相手をチビとは言わんさ。それにユウだったらそんな悪口、実力行使で黙らせにくるじゃん。そもそもそんな事位で泣かないだろうし」
「そりゃそうだ」

 泣きそう? …………何で?
 …………あ、

「また腹痛くなってきたんじゃ」
「…………あー」

 それなら有り得そうだ。アレンは納得した顔で頷いている。

「まぁそんならそれで、ジャスデロが見に行ったから保健室連れてくだろーよ」

 だから、まぁ、いんじゃね?

 そんなデビットの言葉に頷いて俺はすっかり存在を忘れてた、乾いたパンを齧った。



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