「…………ん?」

 相変わらず俺の所為で、俺の出ている体育の授業は終わりが早い。
 一人旧体育館で着替えを済ませ、教室に戻ってくるといつもなら人気がない(最終授業の体育で、わざわざ急いで着替えて戻ってくる理由は俺以外の奴にはない)筈なのに、今日は何やら…………、

「…………だろ、」
「…………か?」
「…………?」

 ん? 今の声、聞き覚えが…………


 ガラッ


 ドアを開けて面食らった。
 そこにいたのは、ラビ以下いつもの面子。お前ら授業はどうした。
 だがしかし、そんな事を突っ込む間もなく俺が視線を奪われたのは、俯いている女の存在だった。奴らはそいつを取り囲んでいる。

「…………何やってんだ?」

 奴らのけして友好的でない雰囲気に眉根を寄せる。

「ユウ、やったのこいつ」
「あ?」
「ロッカーに泥ぶち込んだり」
「靴に画鋲仕込んでみたり」
「あと多分上から水ぶっかけたのもこいつ」

 こいつ、と言いながらデビッドが女を指さした。ってこいつ俺の隣の…………。

「何でまた…………」
「なんかさ、やーな予感したからこいつらと張ってたんだよ」
「そしたら案の定、今度は机だったらしいですよ」
「…………」

 モヤシが指差した方を見る。そこにあったのは掃除用のバケツに入った白い粉…………多分あれだ、運動場とかで線ひく奴。石灰だったか?
 これをぶちまけられたら…………そりゃ困るな。ノートとか全滅じゃねぇか。

「…………何か俺に恨みでもあんのか」

 別段こいつに恨まれるような事は…………、

「…………」
「おい、何とか言えよ」

 デビットが低く唸る。

「デビ、」

 それをジャスデロが止めるように呼んだ。
 丁度目に入る俯いた女の肩が小刻みに震えている。

「…………お前ら。見つけてもらったのに悪ぃけどな、全員外出ろ」
「神田?」
「出てくれ。――――――頼む」
「…………。分かりました。行きますよジャスデビ」

 一つ頷いたモヤシがデビットの肩を押した。

「おいアレン、」
「良いから、行きましょう」
「…………ヒッ、」

 ジャスデビはモヤシに連れられるようにして、外へ。
 残ったラビに視線を向ける。

「お前も、」

 ラビを促すと口をヘの字にしたラビは敵意を込めた目で女を睨みながら言った。 

「嫌さ。危ない」
「おい、」
「何しでかすか分からんじゃん」
「…………、」

 駄目だ、こいつテコでも動きそうにねぇ…………。

 ラビを立ち去らせるのは諦め、俺は女の方に向き直った。

「…………何で俺を狙う?」

 そう問うと女の肩が一際大きく震えた。



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