「よー、ラビ。どうだったよ?」
「どーもこーも無いさ、」

 まだ腹の中に残る、煮えるような怒りと苛立ち。タバコの煙と一緒に吐き出した

「大人しそーな女なのにな」
「あーいうのが一番厄介だろ、勝手に勘違って思い込んで、ほんとマジ勘弁。面倒そうな気配しか感じなかったから関わらないようにやってきたのにさ」

 まさか俺の周りを、ユウを狙うなんて思わなかった。
 吸い始めたばかりのタバコを落として、コンクリートの上で苛立ちを込めて踏み躙る。
 それをちら、と見たデビットは肩を竦めた。

「荒れてんな、お前」
「…………別に」
「でもよー、お前何にそんなにブチギレてんの?」
「…………は?」

 何言ってるんさ、デビットは。
 だってこんなのキれて当たり前、

「お前が女にキレてんの、初めて見た」
「…………、」
「そりゃーああいうのはうぜぇし腹も立つかもだけどさぁ、お前ほとんど何もされてなくね? 変な評判だって今更だし? しかも全部が全部嘘って訳でもねぇし? それに初めてじゃねぇだろ、お前に惚れ込んだ女が妙な真似しでかすのはさ」
「…………、」

 …………そうだ。
 確かに俺は殆ど何もされてない。変な噂は流されたけど。
 だけど靴に画鋲仕込まれたのも水ぶっかけられたのもロッカー泥まみれにされたのも、全部ユウだ。
 俺じゃ、ない。

「…………、ジャスデロは?」

 問いには答えずに逆に聞くとデビットは手を広げてみせた。

「神田んとこ。ロッカーの片付け手伝ってる」
「…………」

 …………そっか、片付け…………。
 そんな事全然思いつきもしなかった。

「後なんか、アレンがあの女フォローしに行ったみたいだぜ? 飛び降りでもされたら後味悪ぃしな。後で礼しとけよ」
「いやそれはどうでもいいんだけど。そりゃするけど」
「おいおい…………だけど、あの女何で神田狙ったんだ? お前とつるんでるっつーなら俺達のが長いのにな」
「…………そうさね」

 あの女は言ってた。「来たばっかりなのに」って。
 ユウが狙われたのは来たばかりだから?
 ――――――本当に、それだけ?

「…………何か、勘付いてたんかな…………」

 例えば俺の言葉の節々とか、態度とかで。
 俺がユウに思ってることを勘付いてたら。

 もしかして、だから?

 だから、ユウだった――――――?
 
「何を?」
「…………何でも」

 だとしたら、そうなんだとしたら――――――

 俺は傍にいちゃいけないんじゃないか?




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