「…………はー、」

 目覚ましを掛けたわけでもなく、自然の目覚めのはずなのに寝起きがイマイチ宜しく無い。
 寝すぎの為かダルさを訴える体を無理矢理引き起こした。ベッドの上で胡座をかいて、寝癖で乱れてそうな頭に指を突っ込む。
 
「あーあ…………」

 …………腹減った。
 今は…………十一時か。
 そろそろ宅配ピザ屋が開店するけど…………

「飽きたしなぁ…………」

 勿論このマンションのすぐ横にはコンビニがあるんだから、ちょっと出掛ければすぐ食料にありつける。
 だけど、今の俺にはそんな事すら異様に億劫だった。
 なんかもう、何もかもが面倒で寝てばっかりだ。

「何かいいもんなかったっけ…………」

 電話一本で注文できて、此処まで持ってきてくれる奴。
 駅からすぐ近いだけあって、駅前のチェーン展開しているような配達も出来るタイプの店の内、殆どの店の配達圏内に入っている。
 ピザ蕎麦ラーメン…………ここんとこそんなんばっかりだ。

 不登校と引篭もりを決め込んで一週間。
 その間俺は一度足りとも外に出ていない。
 買い物は宅配、食事も配達。
 案外こんなんでも生きて行けるもんさ…………。

 〜♪ 〜〜〜〜〜♪

「…………うっさい」

 着信を告げるメロディに、携帯の画面を見た。
 そこに示されていた名前に、出ることも無くそのままぶった切る。

 もういっそ、例の話を早くに進めてもらおうか。
 この国を出てしまえば、あんな憂鬱な思い…………。

 …………でも、なぁ。

 もう一人の自分が頭の中で反対する。
 
 逃げるな。
 向き合え。
 それから――――――

「…………フモーさ」

 こんなの。全部。全て。

 ――――――ボスッ

 再度倒れ込んだベッドの中。
 寝てしまえ、と目を閉じた。








「あ。あー、クソ! 切りやがった!」
「ヒッ!」
「どうしたんですかね…………?」
「…………」

 屋上。
 携帯を手にしたデビットが盛大に舌打ちする。

「僕が掛けた時も出なかったし折り返しの連絡も来なかったんです」

 モヤシは溜息を突きながら自分の手の中の携帯をくるくると回して弄ぶ。

「ジャスデロも?」
「…………うん」
「神田は?」
「試してねぇ」
「いやいやいや、そこは連絡とれよ薄情だなオイ」

 んな事言われたって番号知らねぇし…………

 そう伝えるとモヤシが携帯を開き何やらいじり始めた。

「じゃあ送ってあげるから連絡してください。ついでに僕のも登録しといてくださいよ、何かの時の為に」
「ああ」

 まぁ「何か」はあるかもしれない。

「今日で丁度一週間かぁ」
「まぁ珍しくはないんですけど、今回ちょっと長いですね。ここんとこ調子良かったのに」
「アイツ、よく休むのか?」
「まーな」

 デビットは飛び降り防止の柵に寄りかかりながら、淡々と答えた。

「もともとあんま学校来ねぇ奴だし。ティキがこのガッコ出てから俺達が入るまでの間、あいつ殆ど来なかったらしいぜ」
「…………、」

 ティキ? 誰だ?

「デロとデビの兄キ! ラビが一年だったとき、三年だったよ! ヒヒッ!」
「お前兄弟他にもいたのか」
「あと、妹も…………」
「大家族だな」

 少なくとも兄弟四人か。

「しかし、あれだろ? 神田のロッカー泥グシャー事件からって事だろ?」
「泥グシャーって」

 言いたいことはわかるが…………。

「なんかセキニン感じてそ〜」
「責任なんて女の人相手にだけ取ってればいいんですよそんなもの」

 モヤシは億劫そうに言って、それに、と付け足した。

「何してるか分かりませんよ? もしかしたら新しい彼女と仲良くしてるだけかも」
「もしそれだったらアイツ一発殴らねーと」

 言いながらデビットは拳を丸めて前へ突き出した。
 しかしまぁ、ありがちかもしれない。

 …………そう、ありがち、な…………。

 …………。

 着信を告げるメールの振動。
 ソレを殺すように、強く機械を握りしめた。




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