何でバレて――――――っ

 どく、と大きく心臓が鳴って息が詰まる。

「ああ、その反応。やっぱり『そう』なんだ?」
「っ、」

 カマ掛けただけかよ!!
 思わず睨みつけるが相手はひるむ様子も無く笑ったままだ。

「いや外したらどうしようとは思ったんだぜ? マヌケだもんな」

 クソ…………!


「ところでさ、それ。うちの弟達は知ってるのかな?」
「…………。ジャスデロは。デビットは…………」

 まだ知らない。というより、知らせない。

「ジャスデロがデビットに秘密作るなんて珍しい…………」

 心底意外そうに片眉を跳ね上げたティキは、それから深く深く溜息を付いた。

「それ以前に、こーんな可愛い女の子前にして野郎だなんて信じてるなんざ…………信じらんねぇ。アイツの目は節穴?」
「…………どうでもいいが、バラすなよ?」
「何々、ワケ有り? 黙っててやるから説明してよ」

 興味津々の顔でこちらに身を乗り出すティキに、他人事だからって呑気な…………と溜息を付いて、事のあらましを説明した。







「成程。学校が全力でバックアップしてるんだ」
「ああ、だからデビットが気づかなくても不思議じゃねぇだろ?」

 そもそもジャスデロにバレたのは偶然だ。

「にしても誰か一人位おかしいって思わないもんなの? 俺だったら絶対確かめるけど」
「確かめるって…………どうやって?」
「そりゃー…………」

 手が伸びてきた。体が本能で動く。

「こうやっ…………ぐはっ!」

 テーブル越しに人の体をソファーに押し付けようとしたティキの鳩尾を全力で蹴り飛ばす!
 我ながらいいところに入った蹴りで奴の体は宙を舞い、綺麗な弧を描いて、

「お待たせ――――――ヒッ!?」

 丁度ティーセットを持ってやって来たジャスデロの前に、落ちた。

「えっ!? あ、え!? ティ、ティキ!?」
「おぁああああああ…………」
「え、ちょ…………ヒッ!?」
「ジャスデロ悪ぃ、お前の兄貴蹴り飛ばした」
「え、うん…………まぁいいけど」
「いいの!? 兄さん蹴り飛ばされたけどいいの!?」

 ジャスデロの返答にティキが顔を覆ってわざとらしく泣き出した。
 
「ヒヒッ! どうせティキが何かしたんでしょ!」
「ああ」

 流石、兄弟。相手のやりそうな事は分かるってか。

「股間じゃなかっただけありがたく思えよ」

 数ヶ月前のコムイを思い出し嘆息する。そういえば聞いてないがあの後大丈夫だったのか? あいつ。
 ジャスデロは若干怖い顔(多分奴が出来る表情で一番怖い表情)で、ティキに文句を付けていた。

「ティキ、神田に変なことしたら怒るよ?」
「別に変なことなんか…………」
「怒るよ?」
「…………はい」

 正座して頷くティキを見て、この兄弟のパワーバランスが何となく分かった。ジャスデロ≧デビット>>>>>>>>>ティキだ。間違いない。
 しかしそれにしても兄弟の居ない俺には羨ましい事だ。

「ヒッ! お茶冷めるね、ごめん!」

 コロっと表情を変えて笑顔になったジャスデロは正座のティキを放ってそのままテーブルに向かってくる。
 そのティキは、弟の薄情を責めるような事を何やらぶつぶつ続けていた。







「ひきこもりぃ?」
「うん…………」
「別にラビには珍しい事じゃなくね? いつもだったけど」

 茶はちゃんと三人分用意してあり、そのお零れに預かったティキはジャスデロの隣で大げさに片眉を跳ね上げた。

「でも…………デビやデロや、アレンが連絡しても返事無いんだよ?」
「…………ふぅん?」

 ティキは考え込むように顎に手をやる。

「神田、連絡取れた?」
「いや…………」

 メールは送ってみたが、返事は無い。

「あれか? 何か研究だか論文だかが締め切り近いとか」
「そんなのやってるって話すら聞いてないよ…………」
「…………んー、」
「デビットじゃねぇが、あれか? 俺のロッカーの事が原因なのか?」

 でも別にあれはラビの所為じゃ…………

「ロッカー?」
「ヒッ…………ラビに片思いした子がラビと仲良くしてた神田のロッカーに悪戯したんだよ」
「あれま。お気の毒様。モテる奴はつらいねー」

 苦笑いしたティキは一口紅茶を飲む。

「しかしあいつが俺の所為で、なんて思い悩むタマかね?」
「…………さぁ…………」
「俺も後で連絡してみるわ。ついでに学校に顔見せるように説得してみるかぁ」
「いいのか?」
「いいよ。ラビも知らない顔じゃないし」

 そうか、顔見知りだったっけな…………

「すまない、頼んだ」

 それから俺達は、ジャスデロ発案の「どうやってラビを部屋から引きずり出すか作戦」を練る事になった。




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