「駅まで送るよ」
「いや、結構だ」
「でももう暗いしさ」
ジャスデビ達の家の前。
一緒になって話していたティキが車の物らしき鍵を手の中で回しながら言ってきた。
申し出は有り難いがそれほど離れているわけでもないし、駅までの道は大きい賑やかな通りだから問題ない。
何度も辞退するがティキはしつこく食い下がってくる。
「ヒッ、神田、連れてってあげて! ヒヒッ!」
「…………まぁお前が言うなら」
手間掛けることに気乗りはしないが…………
頷くと、ティキはにっこりと笑って、「車回してくるわ」と言い残して玄関から何処かへ行った。
「…………」
「ヒッ…………ラビ、早く出てくるといいね」
「…………ああ」
背中を撫でた初秋の風に背中がゾクリと戦慄く。
「そういえば、デビットの奴帰って来なかったな」
「うん。後で電話しよっと」
何故かジャスデロはぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。…………その跳ねには何の意味があるんだ?
不可思議な行動を見ていると、徐々にエンジンの音が近づいてきた。
「お待たせ。さー、乗った乗った」
「それじゃあねー」
ティキに促され、ジャスデロに手を振られ、俺は車に乗り込んだ。
ピンポーン
「…………」
何か来たさ…………。
ピンポーン
パソコンの画面から視線を外さず、頭の片隅で考える。手が離せない。折角やる気が出た時にこそこういうのは進めるべきだ。
飯は頼んでないから違うだろうし、色々買ったからそれかもしれないけどそれなら再配送して貰えばいいだけだ。
ピンポーン
「しつけーなー…………」
思わず悪態が唇から漏れる。
諦めろ諦めて下さい今俺は居留守です!
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
「…………ああクソ!」
集中力切れた!
ガタッ!
立ち上がると椅子は後ろにひっくり返った。今は気にしない。
足音をドスドスと立てながら玄関に向かう。
「はいはいはい!? どこのどいつ様!?」
苛立の余りすぐ横にあるモニターを見ることも忘れて乱暴にドアを開き、
そして反射的に閉めた。
いや、閉めようとした。今だって全力で、両手でドアノブをこっちに引っ張っている。だけど残り十五センチの隙間は全く埋まらない。
相手はたった二本、指をドアの縁にかけているだけなのに!
「はーい、こんばんわー★」
その隙間から、にっこりと微笑んだアレンと、
「おうおう、ラビテメェ何シカトこいてくれてんだ? あぁ?」
それから全然笑ってないヤンキー顔のデビット。
「ラビ、このドアもぎ取られたくなかったら…………」
指を二本添えてるだけだったドアの渕に、もう片方の手が添えられる。
「今すぐ快く僕らを招待してくださいねー★」
ミシッ、と蝶番が悲鳴を上げた。
「ちょっ…………」
「猶予は五秒です! ごーよんさんにーいち!」
「待つ気無いんじゃん!」
全く秒数カウントする気がないアレンが一気に叫んだ。
こっちだってドアをもぎ取られちゃ困る!
慌ててこっちの手を離すと、改めてドアは全開にされた。
「やぁこんにちはラビ。一週間ぶりですね姿を見るのも声聞くのも」
「…………なにそれ嫌味?」
「そう聞こえるのは君に心当たりがあるからでしょう?」
…………う。
それにしても俺は必死かつ全力でドア引っ張ったのにアレンは全然平気そうだ。流石の馬鹿力さ…………。
「あー、二の腕痛ぇ…………」
突然の酷使に筋肉が悲鳴を上げてる。
「んで? 何で俺らの事シカトこいたんだよ」
俺のボヤキはスルーしたデビットが相変わらずの怖い顔(ヤンキー仕様)で、半目で俺を睨む。
「別に…………無視なんかしてねえさ。論文に集中してたから気づかなかっただけで…………」
「「ふーん?」」
あ、全く信じてないさこの顔。
「デビット」
「ほいよ」
「!」
ガシッ!
「ちょっ…………」
アレンが突然俺の両腕を掴み、後ろ手に拘束した!
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