「な、何? 何なの?」

 アレンによりしっかりと拘束された腕は振った所でビクともしない。オトコノコとしてはちょっと切ない所さ。
 デビットはズンズンと部屋の方へと歩いていき、そして、テーブルの上に放り出してあった俺の携帯を手にとった。

「あ」

 パスワードは、掛けてない。
 スライド式の最新機種のそれはデビットの物とはキャリアもメーカーも違うけれど、デビットは迷う様子無く操作してそしてズラッと並んだ受信メールの一覧を俺の目の前に突き出した。

「気付かなかった、ねぇ?」
「…………」

 勿論、全部開封済の。

 二人から咎めるような視線を向けられ、俺は思わず顔を背けて白旗を揚げた。

「…………ごめん」
「ったくよ、最初から素直にそう言っときゃいーんだよ。電話切られた時点で気付いてんだから」
「そうですよ、全くもう」

 アレンが俺の腕を離した。
 地味に痛い。

「んー、女の子はいないんですね」
「論文書いてたのはマジなのか?」
「…………」

 ナニしてると思われたんさ俺。不満を隠さず顔に出すと、

「正直新しい彼女とイチャついてると思ってました」

 アレンが実に素直に認めた。
 思わずため息を付いて、二人を促してリビングに向かう。リビングに踏み入るなり一直線に二人はソファーに向かい転がった。

「あ、今日俺ら泊まってくからよろしく」
「え゛」
「明日学校に連行しなきゃいけないですから。二度も来るのは面倒だし」
「な〜」
「ね〜」
「…………はい」

 拒否権なんて今の俺には存在しないのは分かっていたから、俺は溜息を吐き出すのと同時に頷いた。








 〜♪ 〜〜〜〜〜♪

「はい? …………あん?」
『よう、久しぶりラビ』
「…………ティキ」

 携帯越しの声に思わず目を見張る。久しぶりに聞いた声だ。

「久しぶり、てか、どしたんさ?」
『んあ? …………んー、久しぶりに声聞きたくなったっつったら?』
「キモい」
『酷っ!』

 思ったことを素直に伝えたところ向こうで実にざーとらしい泣き声が聞こえてきた。こんな事で泣くようなタマじゃないのは勿論解り切っているのでスルー決定してやる。

「泣いてる暇あったら弟引き取ってけよ…………」
『…………ん? 弟?』
「デビット。なんかあいつ今日此処泊まってくつもりらしいんだけど」

 話しながらちら、とソファーに目をやった。今はアレンと二人して格ゲー中。見たところアレンが優勢だけどまぁそれはいい。

『マジで? アレンと一緒にどっか言ったってのはジャスデロ達から聞いてたけど…………泊まってくんの? 聞いてないんだけど』
「相変わらず蔑ろにされてる家長代行さね」
『え、何で今日そんなに毒舌なの?』

 お前の弟がたった今俺に迷惑かけてるからさ。
 視線は相変わらソファーの上のデビット達。高速で袋菓子が無くなっていき、ゴミが生産されている。

 …………ん?

「なぁティキ。ジャスデロ『達』って誰のこと?」

 そう訊くと、電話の向こうから思うところありげな含み笑いが聞こえてきた。

『…………知りたい?』
「…………」

 何か、絶対、嫌な予感が…………

『神田っていう、カワイイ子』
「ユッ…………」

 何やってんさ…………!

『おやおや、名前で呼び合うような仲だったのか? ジャスデロは家名で呼んでたけど』
「…………俺は誰でも名前で呼ぶけど。大体野郎相手に『カワイー』だって? 何時から宗旨替えしたんさお前」

 再度聞こえる楽しそうな含み笑い。
 思わず舌打ちしたくなるのを堪える

「それで? 結局何の用事?」
『んー? まぁ、単に学校行きなよっていう提言したかっただけ』
「別にそんなの、」
『正直お前が行こうが行くまいがいいんだけどさ、お前頭いいから。でもうちの弟達が凄く心配してるんだよねぇ。お兄さんとしては弟達の心配の種は取り除いてやりたいし? まぁそれにあとあのカワイー顔が心配そうになってるのはちょっと残念』

 よく回る舌でペラペラと言いたいことだけ言って、最後に、

『まぁそんな訳で。明日ちゃんと学校行けよ? 一応デビットに引き摺ってでも連れてくように言っとくからな。あ、それからお前眼鏡かコンタクトレンズ使ってるなら病院行って度数見てもらえ。多分ズレてるから』
「ちょ、」
『じゃあねー』

 ツー、ツー、ツー、

 …………切りやがった。
 何さあいつ、言いたい事だけ言って切りやがって…………。
 しかも何さ、眼鏡とコンタクトの度数って。そもそも使ってないし。
 
「はぁ…………どいつもこいつも俺の気も知らないで…………」

 思わずボヤいてしまってから携帯の電源を長押しで落とし、それから片付けを促すためにアレンとデビットの方へと向かった。




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