「ねぇ、誰が、女顔ですか?」
ぎぎぎぎ、と音がしそうなぎこちない動き(わざとやってるんじゃなくて、そうなっちまうんさ!!)で振り向くと、そこには絶対零度の笑顔を浮かべるアレンの姿。
「アアアアア、アレン、何珍しいじゃん授業サボったんさ?」
「貴方達と一緒にしないでください。授業はさっき終わりました。チャイム鳴ったでしょう?」
「そそ、そーなんだー」
「んで、誰が、女顔ですって?」
近付いてにーっこり笑うアレンに、俺達は白旗を上げて。
「「「ごめんなさいごめんなさい男前のアレン様」」」
「分かれば宜しい分かれば。わざとらしいのが気になりますけどね。…………その転校生さっき見ましたよ」
アレンも俺達の輪に加わってその場に腰を降ろした。
手には大量のパンやら弁当やら、だ。
「え? そうなん?」
「購買で女子に囲まれてました。ちょっとイラっとしましたねアレは。…………トラブル起こしたんじゃなくていじめられて転校したとかじゃないんですか?」
「あー、その線はありそー…………」
確かにあの線の細さは男としちゃ異常だ。
さぞやオカマだとか何だとか、からかいの対象になっただろう。
まぁどうでもいいんだけど。
「あ、ガス切れてるわ。ラビ、火ぃ貸して」
「はいはい」
ライターを放り投げるとデビットが咥えた煙草に火を付けた。
「あー、今日も良い天気だなー生きてるってスバラシー」
その酷い棒読みっぷりに思わず俺は、吹いた。
ああ、くそ。
いい加減にしろ!!
俺がもう少しキれやすい奴だったら今頃そう怒鳴って暴れてる所だ。
現実は難しい上に、同級生の女子生徒に怒鳴る転入生のという図は余りもマズいのは流石に分かっているので大人しくしている。
始終取り囲まれ、ああだのこうだの…………幾ら善意とはいえ、いい加減疲れてきた。
元々、人付き合いは苦手だ。五月蝿いのも。
…………メシくらい一人で食わせろ!!
そう思って、購買で周囲を捲いて逃げてきた。
どっと襲ってくる疲労感にふらつきながら、独りになれそうな場所を探す。
そんな俺の目に、階段が映った。
独りになれる場所の代名詞といえば、屋上だ。
それを期待して俺はその階段を昇った。
ガチャ。
一番上、屋上に繋がっている扉は鍵が掛かっていなかった。
何の気なしに開いたら――――――こっちを驚いた顔で見てくる四対の眼。
先客だ。
「あん? 誰…………」
その中の一人、色黒で黒髪の男が何か言いかけてきたようだが俺は其れを聞かずにドアを閉めた。
俺は一人で飯を食える場所を探している訳で、先客が居る以上此処は駄目だ。
…………そういやいまあの中に赤いのいたな…………
コムイにさっき言われた事を思い出してまた扉を開く。
またこっちを見る四人。
やっぱり、あいついるな。
扉を抜けて近付くと、何故か四人が警戒するような表情を浮かべた。
「…………何?」
…………何で俺睨まれてんだ?
睨まれるような事は…………、ああ、あれか。二限目の事か。
「…………担任が探してる。学校長が呼んでると」
「あ?」
「何呼び出し食ってんだよラビ」
「あー、あの事かぁ…………くっそ面倒………、ちょっと行ってくるわ。先食ってていいよー」
呼び出しに応じるつもりはあるようで、赤毛は立ち上がった。
しかし、何故か擦れ違いざまに。
「…………教師に媚びて腰巾着ってのは、虐められっ子には賢い選択さねぇ?」
「…………は?」
「でも、つまんねー事言い触らしたら、虐めちゃうよ?」
笑った顔は、獰猛な肉食獣みたいだった。
…………しかし何で俺はこいつに因縁つけられてるんだ。
「興味ねぇし、人の事なんざ噂してるほど暇じゃねーんだよ生憎と。とっとと行けよ」
面倒で追い払うようにしっしっ、とやると目の前の男は眉根を跳ね上げて、それから興味を失ったように俺に背を向けた。
俺はちょっとその背に飛び蹴りかましたかった。
あんなの見つけなきゃ不愉快な思いなんぞしなくて済んだのに…………
何故か睨んでくる他三名を無視して、俺はまた飯を食う場所を探しに下に下りた。