※微妙に15禁的な事言ってます注意




「ああああ…………」

 自己嫌悪で涙が出そうさ…………。

 頭を抱えてのた打ち回ると背中の下の古い長椅子がギシリと悲鳴を上げた。
 今日も夢見は、悪かった。
 だけど今日は夢見だけじゃなくて、朝、意識があったのに、他に選択肢は一杯合った筈なのに、

 抜いた、んだ。ユウで。

「最悪だ…………」

 しかも凄く気持ち良かった…………。
 妄想の中のユウの痴態は思い返すだけでまたもや下半身が元気になる。

 とても学校なんか行ける気分じゃなかったけどアレンがやって来て無理矢理引きずられた。万が一にもユウと顔を合わせたくなくて、朝からこんな旧体育館の埃っぽい更衣室で引き篭もってる訳だけど…………。
 駄目だ、気まずい、本当に気まずい。もうユウの顔まともに見られないさ。
 
「俺…………ヘンタイだったんだなぁ…………」

 思わず呟いてしまい、それからその内容に自分でヘコんだ。
 女の子大好きな筈なのに…………。
 いや、だって、でも、誓ってユウ以外の男に欲情したことなんかない。したことあってたまるか!

「あーあ…………もうやんなっちゃうさ…………」

 どうしてこんなんなっちまったんさ…………?
 そりゃ、ユウと出会ったからに決まってる。
 その出会いが不幸だったんだとは、どうしても思えないけれど。


 ピーンポーンポーンポーン…………


 古いスピーカーが篭もった音でチャイムを鳴らした。
 昼休みの終りと五時間目の予鈴を兼ねたチャイム。また昼食い損ねた…………。

「あー、クソ。もう帰りたい…………」

 こんな埃っぽい所で、こんな惨めな事言って。
 こんなのアリ? 自分で自分が虚しくなる。


 ガラッ


 ドアが、開いた。

「?」

 誰だ?
 思わず長椅子の上で半身を起こす。
 足音と気配で誰かが入ってきたのは分かった。だけど誰が、何のために?
 一番あり得るのは俺と同じ、サボりで来た奴だろうけどこのクソがつく真面目な学校で授業をサボるような奴は早々いない。いつもの面子を除けば。
 思わず息を殺し、微動だにせず固まる。
 入ってきたそいつは、三列あるロッカーの、真ん中の列に入っていった。ロッカー越しに伝わる気配で分かる。俺が寝っ転がってる長椅子は一番右の列だ。


 シュル、


 衣擦れの音。制服でも脱いでるんだろう。どうやらロッカーの向こう側の奴は此処で着替える為に来たらしい。
 つっても、何で? 今日は旧体育館では授業がない、体育なら新体育館かグラウンドだ。だったら新体育館の更衣室で着替えればいいのに。何も、こんな古くて埃っぽい所で着替えなくたって…………
 つらつらと考えながら視線を巡らせ、



 そして何の気無しに窓の方を見た俺は、


 そこに置いてある、埃を被った姿見に、


 そこに映る人に、


 心臓が凍るような思いを、した。

「…………ッ!」

 落ち着け落ち着け落ち着け俺の心臓! 騒ぐな喚くな暴れるな!
 必死で脳から五臓六腑に命令させようとしたところで上手く行くわけがない。
 思わず握った拳はあっという間に汗をかく。

 その鏡に映し出されたユウは、ベストを脱ぐと細い指をシャツのボタンに掛けた。

 うわ、わわわ、

 見なきゃいいのは分かってる、だけどどうしても目が言う事を聞かない!
 ぷち、ぷち、と外されて行くボタン。指が下まで行って、そして開かれた胸元を――――――

「…………?」

 覆っていたのは、包帯みたいな布切れだった。所々緩んでいる。
 何、さ? アレ。まさかケガでも…………

「…………」

 その布に手を置いて自分の胸を見下ろしたユウは、それを解き始めた。

「、」

 ああ、クソ、どうして、
 俺は今、ベッドの上の全裸の女の子を前にした時よりも、刺激的なビデオを前にした時よりも、興奮してるんさ…………。
 ズボンの下で反り返る愚息が疎ましくてしょうがない。
 だけど視線は目の前で行われてるそれに釘付けで、


 どうしようも――――――え?


 ――――――え?


 全部の布を取っ払った「そこ」には、此処からでも分かる、だけど極めて控えめな膨らみが、ちょこんと二つ、存在していた。


「――――――っ!?」

 ヤバイ声出るっ…………!

 慌てて両の手で口元を抑える。埃の味がしたけど今はそんなのどうでもいい!
 ユウはその布をもう一度キツめに巻き直していった。器用に布の端までを巻きつけて、それからベルトを取り、ズボンに手をかけ…………

「〜〜〜〜っ、〜〜〜〜〜〜!!」

 ミントグリーンの、可愛らしいそれが網膜に灼きつく!
 記憶力に秀でていて良かったと初めて心の底から思えたのは、多分今この時だ。


 抑えたままじゃ息が出来ない、苦しい、
 早く、早く、

 俺の願いが天に通じたのか、ユウはジャージを…………「俺」のジャージを着ると、走って更衣室から出て行った。

 ねぇ、もういい? もう喋ってもいい?
 
「――――――は、」

 口元から手を離すと肺が新鮮な空気を求めて大きく膨らんだ。
 そのまま、長椅子にもう一度上半身から倒れ込んだ。
 
「うっそ…………」

 何? あれ。いや、あれ何?
 いや何? じゃない、あれは、だって、でも!?

「…………女の子?」

 じゃなきゃ、有り得ない。あんなの。
 いやもしかしたらホルモンの異常でああなってて、下着は趣味?
 …………そっちのほうが余程有り得ない。

「マジかよ…………」

 やられた、やられた、やられた!
 そりゃ華奢でいい匂いだってするよね…………

「あー、クソ、どうしよう…………」

 下半身にだけ集中してた熱が頬に集まってくる。顔が熱い。今の俺の頬でなら、目玉焼きが作れそうだ。

「ヤバイ、オチた…………」


 赤い実が、弾けた。





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