ムスッとした顔の二人を無理矢理引き摺って第一保健室へ。

「クロスー! この猛獣二匹診てくれよ〜」

 デビットがドアを開けつつ中に声をかける。

「…………あぁ?」

 至極面倒くさそうな声が聞こえ、続いて俺が中を覗き込むとクロスは雑誌を呼んでいた。…………エロ本読むな保健室で。俺が言うのもなんだけど。
 声と違わず面倒くさそうな顔をしたクロスは、俺達が引き摺って(というか、手を握って連行しただけだけど)二人を見て少しだけ顔色を変えた。
 そして手元の分厚い辞書のような症例集を手にとる。

「「?」」

 何さ?

 そしてツカツカ歩み寄り、ユウとアレンの前に立つとその背の部分で思いっきり――――――


 ゴンッ!


「った〜…………!」
「「「「!」」」」

 アレンの頭を殴った。
 殴られたアレンは頭を抱えて蹲る。
 
「何やってやがる、馬鹿弟子」

 面倒臭さと怒りが半々位の顔と声でクロスはアレンを見下ろし、睨みつけた。

「おいおいおいちょっと待てよ、アレン限定かよ」
「あん?」
「喧嘩両成敗って言葉があんだろ…………」
「え」

 デビットが若干呆れ気味に言い、俺は思わず変な声が出る。え、殴るの? あれでユウ殴るの!?

「…………ふむ」

 クロスは少し考えるかのように顎に手をやってから、症例集を手にしたまま机に取って返し、

「「「「?」」」」

 傍にあった、十枚くらいのプリントの束を手に取った。
 そして戻ってくると今度はユウの前に立ち、


 パサッ…………


「…………」

 ユウはプリントの束で叩かれた? 自分の頭に手をやる。

「これでいいだろ」
「良い訳無いでしょう!」
「さ、差別だー!」

 アレントデビットが喚き立てた。そんな二人はクロスは溜息をついて、

「差別じゃなくて区別だ馬鹿共」
「何がだよ!」
「全部だ。…………おい二人同時じゃ面倒くせぇ。神田、お前は第二行け」
「分かりました」

 クロスに言われ、ユウは保健室から出て行った。クロスの言う事には割と素直に従うんさね…………。

「ジャスデロ。お前、コムイとリーバー呼んで来い。授業始まってても引き摺ってこい」
「ヒッ!? わ、分かった」

 更にそう言われたジャスデロがパタパタと駈け出して行った。
 アレンは不満げに口を挟む。

「ちょっと師匠どうしてリーバー先生が…………」

 現国担当のリーバーは一年の学年主任だ。アレンは自分のクラスの担任の話は全く聞かないから、確かにリーバーの方が説教するには効果的だろう。コムイは俺達のクラスの担任だし。

「うるせぇ。あとデビット、先に顔見せろ」
「あ、やっぱ気付く? 腫れてるか?」
「え? 何お前も?」

 見てただけじゃないんさ?

「言っとくけど俺は神田に殴られただけだぜ? 反撃しようにもアレンと神田がバトり始めたから俺の出る幕ねーんだもんよ」

 つまらなさそうに言ったデビットだが内容は大問題さ。
 こ、こいつら知らないとはいえ女の子相手に二対一だったんかい…………。まぁ知らない事なんだけどさぁ…………。
 っていうか俺も前一回ユウの頬叩いちゃったよな…………

 DV、という単語が脳裏をチラついて思わず凹んだ。例え反撃食らって俺達の方が重傷になったとしたって女の子に手を上げた事実には代わり無い。

「そもそも原因は何だ」
「…………別に」
「別に、じゃねぇんだよクソガキ」


 ゴンッ!


「でっ…………」

 ああ症例集第二段…………。頭の形変わりそう…………。

「後でキッチリ吐かせるからな」
「ひぃぃぃぃぃ…………」
「ゴシューショーサマ。あ、クロス俺は殴る前に聞けば何でも喋るからな」
「ちょっとデビット!」

 …………?
 本当マジで何が原因何さ…………?



 クロスによるアレンの手当て(という名前のいじめにも近かったけど。消毒液顔にぶっかけられてたし)が終わった頃、ジャスデロに伴われ頭と胃が痛そうなリーバーがやってきて、アレンとそれからデビットを引取っていった。これから事情聴取&説教タイムだろう。
 四人が居なくなり、保健室には俺とクロスだけが残った。



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