クロスのところでぼーっとしながらユウ達の戻りを待っていると、クロスのデスクの上の電話機が内線の着信を告げる音で鳴った。
「あん?」
クロスは面倒そうな仕草で受話器を取り一度耳に当てると、直ぐにそれを俺に向かって放り投げてきた!
「うわっ! 一言掛けてからにするさ!」
「お前宛てだ」
落として壊したらどうするんさっ!!
弁償なんかしないからな!
「ったくもう…………はい? もしもし?」
『ああ、ラビかい?』
あ。コムイだ。
説教は終わったんかな…………?
「うん、俺さ」
『これからちょっと、僕の研究室来れるかい?』
「うん、まぁ大丈夫だけど」
「僕の」じゃなくて「科学」研究室の筈だけどね…………。
『じゃあ来てね、待ってるよ〜』
ピッ
コムイの脳天気な台詞を最後に通話を切った。
受話器をクロスに返そうとし、全くクロスがこっちを見ないで雑誌を見ていたので諦めて自分で受話器を本体に戻す。
「じゃ、俺コムイに呼ばれたから行くさ」
「ああ行けとっとと行け」
追い払うように手を振られ、俺は保健室を後にした。
「お邪魔するさ〜。コムイー?」
「ああ、こっちだよラビ」
相っ変わらずグッチャグチャだなぁ…………
授業用の資料とか研究用の資料とか、よく分からない物体Xとか。
最近はご無沙汰してたからちょっと忘れてた。
「その辺に適当に座っていいよ」
「そうは言うけど、座ってよさそうな所見当たらないんだけど」
スツールの上にまで「何か」があるんだけど。
「まぁまぁ。はい、コーヒー」
「あ〜…………」
何時も通り煮詰まり気味なコーヒーを渡され、立ったままで取り敢えず口をつけておく。…………苦い。
「エライ目に遭ったねぇ」
「まぁ俺はエライ目って程でもないケドね。どっちかってーと、ジャスデロの方が大変だったんじゃねぇ?」
「それはそうかもね」
コムイは頷きながらコーヒーを啜る。
「で、何で俺呼び出されたん?」
まぁ原因は十中八九アレだろうけど。
「…………彼らのそもそもの喧嘩の原因が気になったからね」
「原因…………」
ああそうだ、それをまだ聞いてなかった。
「何が原因なんさ? あれ」
「元々の原因は君らしいよ」
「…………へ?」
指差され、思わずその指先を視線で辿った。…………うん、俺だよな。俺しか居ないさ。
「え、え? 何で?」
「神田君を随分避けてたんだって?」
「…………ああ、うん」
…………確かに。
避けてたよなぁ…………だって顔合わせるの気まずかったから…………
やたら惹かれる理由が分かった今となっては、避ける必要なんて全然感じてないけど。
「どうやらあの二人は、その理由は神田君が君に何かしたからだと思ったみたいだね。で、それを神田君に問い質そうとして…………」
…………あ。
「心当たりが無い神田君と口論になって、喧嘩になったみたいだよ」
「…………ああああああ!?」
じゃあさっきのアレの原因は元々は俺!?
うわぁぁぁ最悪さ!!
ユウに心当たりなんてある筈ない、だって俺が一方的に逃げたんだから!
その場で頭を抱えた。此処がこんなゴチャゴチャしてなかったら床にダイブしてのたうち回ってた!
「あの二人は結構友達思いだからね。だからこそってのがあったんじゃないかなぁ。やり方が乱暴すぎるのはやっぱり駄目だけど」
「…………ああああ…………」
原因は俺かよ…………あああああああ…………
「で、さ。聞きたいのは君が神田君を避けてた理由なんだけど。まさか二人が言ってたみたいに何かされた訳じゃないんだよね?」
「…………えあ?」
「話聞いてればそれだけ逃げてたら、確かに神田君と何かあったんだろうなって僕だって思うよ。有り得ないとは思うけど」
「…………何もされてなんか無いさ」
んな訳無い無いだ。
どっちかというと、俺「が」何か「したかった」の間違い。
「んじゃあ、どうして?」
「…………」
え? あ、あれ?
これ言わなきゃ駄目な感じ、さ?
「え、えー、と?」
にっこり笑ったコムイからは「話すまで逃がさないよ」というオーラが感じられる。
あれ、でもこれ説明するって事は…………俺相当恥ずかしいさ? だって全部って…………全部?
「さぁ、キリキリ喋って貰おうかなー。あ、ところでそのコーヒー自白剤入りなんだけどどう? 話したくならない?」
「ちょっ、何混ぜたんさあああああ!」
あーもーチクショー! ロクな事しねー!
そして俺は世にも恥ずかしい目に遭った…………。
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