拷問にも近いコムイからの尋問(?)を受け、精根尽き果てた俺はぐったりとその場で項垂れた。
「ほうほう成程成程。若いっていいねー」
コムイはイヤらしくニヤニヤしている。
「感想がそれ!?」
こんな目に遭わせてっ…………!
「まぁ気持ちは分からんでもないねぇ。神田君可愛いし。あれでスカート履いてたら今頃モテモテだっただろうしねー」
「うううう…………」
「取り敢えず事情は分かったよ。ねぇ元凶君?」
「元凶はヤメるさ…………」
確かに元凶かもしんないけど。
「全部話して…………とは言えないけど、ちゃんとアレン君達にある程度説明してフォローするんだよ? あんな事何度も有っても困るし…………」
「…………うん」
まずはユウは何もしてないってことを理解してもらわなきゃならん訳で…………
あああ隠し事しながらその説明ってかなり難しいし…………
鋭いアレンの事だ。俺が隠し事をすれば何か察するところがあるだろう。
「…………アレン達何処?」
「んー? リーバー君が連れてったから、多分進路指導室じゃないかな」
うーん…………まだ終わってないだろーなー…………
「ユウは…………第二保健室か」
先にユウんとこ行ってみよ。
俺は決めてコムイにその旨を伝えた。
もう話は終わってたからコムイは頷いて手を振ってる。
科学研究室を出た俺は、第二保健室へ向かった。
二段飛ばしに階段を登って、「第二」と掲げられた部屋の前。
「失礼しまーす…………」
そっと声を掛けて引き戸に手を掛けた。これでユウ以外の女の子がいたりでもしたら顰蹙モノだ。もしかしたら痴漢扱いされるかもしれない。
カラリ。
ドアを開けて入った第二保健室は、静まり返っていた。アニタ先生もいない。
「…………?」
ユウを探して部屋の奥の方へ向かい…………あ、いた。
衝立の影の長椅子に座りながら眼を閉じて…………あれ、寝てる?
「…………」
ユウの胸は規則正しく上下しながら、でも目を開く様子はない。
頬に貼られた大袈裟なくらいのガーゼ。
思わず手を伸ばして、包み込むようにして触れた。と、だ。
「ん…………」
「!」
ユウが微かに身じろいだ。
慌てて触れた手を引っ込ませる。
い、痛かった、んかな?
「…………」
ぽとり。
「あ…………」
涙が一滴、零れた。
え、えええ!? そ、そんなに痛かったんさ!?
俺が一人でわたわたしていると、ユウが小さく何か呟いてから目を開いた。…………焦点が合って無い、でも綺麗な、濡れた目で俺をぼんやりと見る。
その目がゾクゾクするくらい色っぽくて(こんな目で情事の時に見られたらそれだけで理性吹っ飛ばせる自信がある!)思わず固唾を飲んで見詰め返していると、
「…………ラ、ビ…………?」
呆然としたような、驚いたような、そんな声で俺を呼んだ。
「ん、そう。分かる?」
「何でお前此処に…………」
…………うん。まぁ、確かに。
本来第二保健室は女子用のだから男子禁制だ。第一に女子が来るのは比較的容認されるけど逆は普通に有り得ない。それは周囲には男子として認識されてるユウにも当て嵌まるだろうけど。
「迎え来たんさ」
「…………え」
「もう帰ろ? 六時間目だってもう半分以上終わってるし」
そもそもそんな怪我で授業に途中参加したら周囲の好奇の視線を買うだけだろう。いやもう、今更な部分もあるけど。
少し考えるよう顔をしたユウに手を伸ばす。
「ね?」
「…………ああ」
ユウは頷くと、俺の手は取らずに一人で立ち上がった。あ、あれ? ちょっと寂し…………あ、そか、普通野郎同士じゃこんな事しないか…………
「顔、大丈夫?」
「別に、大した怪我じゃねぇ」
十分大した怪我に見えるんだけどね…………
「ユウ、一番近い電車何時?」
「あー…………」
俺達は二人連れ立って、第二保健室を後にした。
俺の鞄を取りに教室に戻る途中。
「「「「「あ」」」」」
バッタリと五人、顔を付き合わせた。
「「…………」」
無言で睨み合い戦闘態勢に入るアレンとユウ(まるで毛を逆立てた猫みたいだ。二人共)を、アレンはジャスデビが、ユウは俺が、それぞれ止める。
「まーまー、落ち着くさぁ」
「おいおいヤメろってアレン。さっき散々説教食っただろ〜?」
「そ、そうそう! ヒッ!」
「「…………」」
俺達の言葉に、二人はぷいっ、とそれぞれそっぽを向いた。
「てか、そっち終わったんさ?」
「おう、ついさっきな。で、もうダリぃし帰ろうぜって話になって」
「今鞄取りに来たんだよ! ヒヒッ!」
「俺らも今帰ろって話してたところ。んじゃ皆で帰りますか」
「そうだねっ!」
皆、の所にアレンとユウが敏感な反応を返した。けど、突っ込むとまた拗れるのは目に見えてるから敢えてスルーする。
「あー、そうだ、帰る前に飯食ってく?」
「今からかよ、晩飯には早すぎんだろ?」
「んじゃーカラオケかボーリングか行ってからは?」
「お、いいねぇ」
俺の思いつきの発案に、デビットがノッて来た。なら、当然ジャスデロも来るだろう。
「ね?」
俺は笑顔を作ってユウとアレンに振り向く。
「…………まぁ、いいですけどね。どうせ家帰ったって暇だし」
「…………俺は…………」
「ハイハイハイハイ細けー事はどうでもいいだろ、さっさと行こうぜさっさと!」
「わっ…………!」
デビットが何やら渋る調子だったユウの手を掴んでずんずん歩き出し、ジャスデロがその後を小走りでパタパタと着いて行く。…………デビット場所変われ。
「…………なーんか。また仲良さそうじゃないですか」
「はは…………」
残ったアレンは俺を恨みがましく横目で睨む。
「あのさ、アレン。俺本当にユウと何かあった訳じゃないんさ。勘違いさせてゴメンな」
「…………」
「詫びに何か奢るからさ、」
だから、ユウと仲直りしてくださいゴメンなさい本当すいませんでした。
「…………いいですけど。ところでラビ、カードの限度枠は大丈夫ですか?」
「ど、どんだけ食うんさ!?」
怖いんですけど!
口元で笑ったアレンが先に行った三人を追って歩き始め、俺もそれに倣った。
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