結局、カラオケじゃなくてボーリングになった。若干名、絶対歌わなさそうなのがいるからだ。片方は音痴で、もう片方は苦手だと言って。
初めて来たと言うユウに俺達全員が仰け反り(だって今時!)、用具のレンタル方法から教える事になった。そこでユウが選んだボールはかなり軽い女性用で(実際ユウの腕力はそんなに無い)、アレンとデビットは不思議そうな顔をしたけどさり気無く話題を逸らしたら直ぐに忘れ去られた。大体ジャスデロなんかそれ言ったらアレ、子供用のボールだし…………
ユウは最初のうちは加減が分からずガーターに落としてばっかだったのに、二ゲーム目に入った頃からコツを掴んだのか今度はストライクを連発し始めた。今はアレンと張り合ってる。
「おーおー、神田の奴スコアすっげぇ伸びてんな」
順番待ち中にディスプレイを見上げたデビットがコーラ片手に肩を竦めた。確かに。既に一ゲーム目の三倍くらいのスコアが出てる。
「初心者って嘘だろ絶対」
得点はアレンがトップ、その次に俺、俺とほぼ変わらない点数のユウ、その下にデビットと遥か彼方向こうにジャスデロ。
「お前が点低いのは消える魔球! とか言って遊んでるからだろ?」
大体消えてないし。ガーターに落としてるだけだし…………。
いやまぁ、遊ばなくてもジャスデロは問題外かも知れないけど。
「そりゃそーだ。で、後何ゲームやるんだ?」
「あー、あの二人が満足するまで?」
…………レーンのすぐ近くでは(レーンの上でやらないのはきっと二人の良心だ)、またしてもユウとアレンが何やら口論している。ジャスデロが仲裁しているためかそれ程大きな騒ぎにはなってない。
と、思ってたらアレンが大きく腕を上げた。一瞬腰を浮かしたけどそれはどうやら喧嘩ではなくて、アレンがユウにフォームの説明をしてたらしい。…………何だ。
浮かせた腰を降ろすのも何だったから、
「自販機行ってくるわ」
「はいよ。順番までに戻れよ? 投げちまうからな」
「ヤメるさ!」
財布を掴んで自販機に向かう。
お茶とコーラとファンタとコーヒーを選んで、腕に抱えて戻ってくると丁度ディスプレイにはターキーの表示が踊っていた。投げたのは…………ユウだ。
「飲み物欲しい人足ぇ上げてー」
「…………足?」
ユウが呟いた。が、結局三人共足を上げた。
「ほいよ」
「あ、くそっ俺だけ損した!」
「そんな飲み物で大袈裟な…………」
ユウ達に配っているとデビットが舌打ちする。…………高々ジュース一本の事なのに…………。
「後何ゲームやる?」
「んー、もうちょっとやりたいですね」
「ラビ、お前次のゲームで神田にスコア抜かされんじゃね?」
「そーかもねー」
オンナノコに負けるというのはちょこっとだけプライドに触るけど、でもまぁいいや。どうせ喧嘩したって勝てないんだから。
何でもない顔で笑っておく。
「ユウ、調子いいもんね」
「…………あ、ああ」
俺が声をかけると、ユウは戸惑ったような返事の後直ぐにジャスデロに何か話しかけた。
…………あるぇー? 何か俺、避けられてますか?
「…………」
アレンがそんな俺達を横目で見て、「面倒臭い人達…………」と呟いた。実に耳に痛いその言葉は、聞こえないフリをした。
あの後更に二ゲームやってその後ファミレスに流れた。
アレンの頼んだ量にユウは唖然とし、そして途中でユウが食べてた物までアレンが食べてすわまた喧嘩か、って思ったけどユウは小さく「あ…………」と呟いたきり諦めたらしくドリンクバーのお茶を飲んでいる。
「も一回頼む?」
「いや、半分は食ったしもういい」
指摘するのも面倒、そんな顔で溜息を付いたユウは窓の外をぼーっと見ていた。
「あー、マジ帰んのメンドくせぇ。どっかでオールしねぇか?」
ガッツリ肉に行ったデビットがフォークを片手に頬杖を付く。
「この格好で?」
「…………マズイよな、オマーリ来るわ確実に」
俺達は全員制服だ。特にアレンなんかはまだ十五な訳で、間違いなく取っ捕まるだろう。それは大変メンドクサイ。
時間もそろそろ十時になりそうな所だ。今日は大人しく帰るってもんだろう。
「電車、近くの時間にあるか?」
「僕は四十分後ですね」
「俺は三十分。お前らは?」
「迎え呼ぶからいーわ。神田は?」
「…………」
ユウは鞄をごそごそ探り、中から引っ張り出した生徒手帳を開いた。
「…………。三分後」
「駄目じゃね?」
いくら駅前だとは言え厳しいものがある。
「その次は?」
「…………無い」
「「「「は?」」」」
お、見事にハモった。…………じゃなくて。
「無いって、三分後が終電?」
「…………らしい」
こんな遅くまで帰らなかったことが無いからな、とユウは嘆息した。
おいおいおい…………
「どうするんですか?」
「まぁ歩いて帰れない事もない」
「どの位掛かるんです?」
「…………一時間半位?」
遠っ!
「それ帰れない事もないって言わねーだろ。いいじゃん、ティキに言って神田ん家回ってこーぜ」
「ね!」
「…………や、でも、」
「乗っけてってもらいなって、危ないじゃん?」
俺がそう言った瞬間。
「「何が?」」
「え゛」
心底不思議そうな、アレンとデビットからの反応が返ってきた。
…………あ。
えーと、えーと…………、!
「ほらこの制服私立のじゃん? 金持ちだと思われて変なのが寄ってくるかも」
「いるか? そんな奴」
「あーでも、僕は何度かありますよそういうの」
よっし切り抜けた!
心の中では拍手喝采、自分で自分を褒めてやりたい所さ。
「じゃ、そーゆーコトで。そろそろティキ呼ぶわ」
見ればアレンの前の皿は全て空だ。
頷いて、自分の前にあった空の皿を脇へと退けた。
ユウは窓の外を見たまま、終ぞ俺と視線を合わすことはなかった。
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