「ああ、皆丁度良い所に!」
「え」
「げ」
五人で遊んで、開けた次の日の昼休み。
五人連れ立って屋上の向かう途中、コムイに声を掛けられた。
「今丁度着いたんだ、手伝ってくれないかい?」
コムイの背後には大きな段ボール箱が六つ。
授業で使う機材さね、あれは。
「げ〜…………」
露骨に嫌そうな顔のデビットをジャスデロが宥めている。
拒否ってもいいんだけど、その場合俺達の身の安全の保証はどこにも無い。
「はいはい。何処運びゃいいんさ?」
「僕の部屋にお願いしたいんだけど」
「よるによって二階…………」
仕方無しに俺達は目配せしあって、各人一つ一つ段ボール箱に手をかける。
「っと…………」
結構、いやかなり、むしろとても重い。50キロ近くあるんじゃ…………
…………何入ってるんだろう? 水溶液か、ガラスの機材辺り…………?
っていうかこれは持てないだろ、ユウとジャスデロには。
ちら、と見ると案の定、ユウとジャスデロは持ち上げる事が出来なかったらしく顔を見合わせあっていた。
頷きあった二人は二人で一つに取り掛かり…………それでも箱は持ち上がらなかった。てかジャスデロ、そこはもーちょっと頑張るところさ…………
「何だこれ、何入ってんだよ!」
こちらは持ち上げたデビットが、箱を抱え込んだままギャーギャー騒いでいた。
「それは企業秘密だよ♪」
「…………『企業』秘密…………?」
心底胡散臭そうな顔でユウがコムイを見た。
顔がほんのり紅くなっているのはきっと努力の結果だろう。
「ユウ、ジャスデロ、それそこに置いといていーよ。俺がもう一往復するから。俺達の昼飯持って、先屋上行ってて」
「あ! ずりーぞ! ジャスデロは兎も角!」
「しょうが無いじゃん、持ち上がらないんだから」
「全く…………鍛え方がなってないんじゃないですか?」
「何だと!?」
アレンの言葉にユウはキッ、とアレンを睨んだ。
アレンもそういう事言わない、ユウだって女の子の中じゃ十分強い方なんだから…………
アレンは睨みつけてきたユウの事はスルーして、段ボール箱に近寄る。
「「え」」
いとも簡単にアレンはジャスデロの分の段ボール箱を拾いあげて自分の割り当て分の上に重ねて、右腕で持ち上げた。
「うっわ…………」
それからユウの分の段ボール箱に最後の一個――――――っつかそれコムイの、本人にやらせればいいのに――――――を重ねて、それを左腕で持ち上げる。まるで蕎麦の宅配みたいだ。
約50キロ×4=約200キロ、の筈なんだけどそんな重さは微塵も感じさせない。
「お前そんだけ余裕なら俺達の分ももってけよ」
「やですよ、どうして僕だけがやらなきゃならないんですか」
アレンとデビットは言い合いながら二階への階段へ向かって歩き出した。途中すれ違った何人かがぎょっとした顔でアレンを見る。
「すげぇな…………」
心底感心した、そんな顔でユウがアレンの背を見る。
純粋な感嘆の眼差しに、胸が少しざわついた。
「「「「…………は? 落ちた…………?」」」」
「…………」
ぐったりと膝に顔を埋めたユウに俺達は実に間抜けな顔をした。
「いやあの、アレって落ちるような奴じゃないと思うんですけど」
「てーか、中学生でも余裕で取れるぞあれ…………」
「…………」
ユウが落ちたのは所謂英検、しかも3級。
俺達は英語が母語だから…………ってのはあるけどでもそれにしたってユウそれはちょっと…………。
「お前、悪い事は言わねぇ。留学とかマジ諦めろって」
…………確かに無謀極まるさね、それ。
ユウの転入試験の結果、そういえば英語も散々な結果だった。あのテスト結果じゃ、本当なら確実に此処には入れなかっただろうって位にだ。
じーさんのコネさね…………。
「ラビー、このバ神田に教えてあげてくださいよ」
まぁ此処にももう一人、コネで入った奴がいるけどね。
「んー…………」
教えるのは良いんだけど…………
でもまぁ、次の3月に入学できる学校だとしてもそこにはもう間に合わないだろう。9月なら何とか…………かな?
「…………」
「暫くラビんとこ泊まりこんで」
「一日じっくり見てもらえばいいんじゃないです?」
「「え」」
…………え?
「あー、そりゃいいわ。お前ら英語以外で会話すんなよ」
…………えっ??
小説頁へ