あれから数日後。
 今俺の隣には大きな肩掛けカバンを持ったユウがいる。
 …………前回の事といい、ユウのじーさんとばーさんは何考えてるんさ? いいの? 大事な孫娘を男のトコに泊まらせて…………
 ユウも何やら複雑そうな顔をしてるし。
 何でも、ユウのばーさんと話をつけたのはアレンだったらしい。英語の練習の為っつったら両手を上げて賛成だったらしいけどそれもどうなのかなー…………。ってか何でアレンがユウのばーさんに? ユウが自分で言ったならまだしも。
 ぐるぐると色々考えてると、ユウが小さく溜息を付いた。何となく話し掛け辛くて、俺達は無言のまま俺の家に向かった。







 ピッ

「あ゛」
「?」

 それを思い出したのは、セキュリティを解除して部屋に入る直前だ。
 やっべぇ! 色々出しっ放し! 見られていいのも悪いのも!!

「ご、ごめんユウ! 五分此処で待ってて!」
「え、あ、おい?」
「ごめん!」

 驚いた顔のユウの目の前で部屋に駆け込む!
 脱ぎ散らしてある服やパンツ、食い散らかし…………はまぁ後でもいい、えーと金髪ねーちゃんのエロ本とあれとこれとそれ!
 そういや確実に一回見られてるから今更ではある。あるけど駄目さこれ。
 服と下着の類は纏めて洗濯機に放り込み、本他アブない物はベッドの下に押し込んだ。食い散らかしは纏めてキッチンの水場へ放り投げる。あ、何か割れた。…………ま、いっか…………。
 滅多に使わない掃除機を引っ張り出して目につきそうな辺りを適当に吸って、ジャスト五分!

「ごめんごめん! 入って大丈夫だから!」

 外に出て、共用廊下で手持ち無沙汰に待っていたユウに慌てて声を掛けた。

「…………本当に大丈夫なのか?」

 姿は見えずとも音で大体事情を察してる、そんな顔でユウが聞き返す。

「う、うんまぁ」

 ヤバいのは片付けた。…………大丈夫だよね?
 ユウは恐る恐るといった感じで入ってきた。つつつ…………とその視線が横にスライドし、シンクの惨状でピタリと止まる。さっきの破壊音の、主な発生源だ。

「割れてねぇか?」
「あー…………」

 多分、下の方の奴がいっちゃってる。間違いなく。
 取り敢えずそこは見なかったことにしてもらって、二人でリビングに入った。
 
「適当に座ってて」

 ソファーの辺りを指で指し示してキッチンへ戻って冷蔵庫を開いてみる。何かあったかなー…………あ、あった。デビットが置いてったコーラが500のペットボトルで二本。
 出すけどこんなんユウが飲むか?
 取り敢えず出して、それを手にリビングに戻るとユウはソファーに腰掛けて、鞄からテキストを出していた。

「何からやるといいんだろうな」
「ユウ、もう文法とかは諦めてまずは会話と単語から始めよ?」
「分かった」

 進学が掛かってるせいかユウは何時にもまして真面目な顔で(ああでもユウは元々学業に関しては真面目だ、但し結果は伴わないけど)頷いた。





 二時間後。
 先程から五分ほど、ペン先は固まったままだ。
 視線がテキストの一番上から一番下まで滑り、また一番上に戻るのをずっと眺めてた。
 理解ってないなこれ。

「…………」
「休憩する?」
「…………する」

 俺の提案に乗ったユウは溜息をついて、ペンを置いた。疲れた表情だ。

「初日から飛ばしても、しゃーないっしょ」
「でも、時間ねーんだよ」
「まぁそりゃそうだけどさー…………あ、いっそ学校サボって俺と勉強する?」
「それは駄目だ」

 …………ちぇっ。

「お前と違って俺はきっちり出欠取られてんだよ」
「ああー…………」

 そっかぁ…………
 ユウも特別待遇っちゃ特別待遇なんだろうけど、そういう恩恵はない訳ね…………
 それに試験で得点が取れないなら出席で平常点取るしかないんだろう。進学の為にも。

「学校卒業出来なかったら元も子もねぇ」
「そりゃ確かにね。…………何か持ってくるから、何かテレビでも見て…………」

 俺がそう言うとユウはすぐ近くにあったリモコンを取り、


 ピッ


『あっ、あー!』


「「!!??」」

 え゛っ!?

『あん、あん、あ、あー!』

「…………っ!?」

 ユウと二人して、思わず呆然とテレビの画面の中の痴態を見守る羽目になる。
 最初の衝撃に、段々と事情が飲み込めてきた! っていうかこれは!!

「う、うわぁぁぁ!?」

 消すために慌ててユウの手の中のリモコンに手を伸ばし、

「ちょ、ユッ、ぐはっ」

 テーブルに足を取られて脇腹を強かに打ち付けた!
 
 ぐっ…………て、ぇ…………っ!

「っわ、おい、ラビ、あ、クソッ」

 目の間でこけた俺に狼狽えた後にユウは原因のそれを消せばいいと思いついてくれたみたいで、電源を思いっきり長押ししてテレビへ向けた。
 ダークアウトした画面にテーブルの上で安堵の溜息をつく。と、脇腹が地味に痛い。

「お、おい…………」
「あー、うん、大丈夫…………てかごめん」

 そういやぁ昨日見てましたあれ。はい。俺です。

「…………。変なモノ見せるな」

 ユウはずい、と俺の方へリモコンを突きつける。予想していたそれ以上の制裁は無く、ちょっとの間でどっ疲れた、そんな顔でユウはソファーに凭れかかった。
 ああああ…………またしても失態…………

「いててて…………」

 ちょっとだけ涙が出たのは、絶対脇腹が痛いからだ。うん。そうに決まってるさ。



 小説頁へ