『誰が! お前なんかに渡すかぁぁぁぁぁ!!!』
「!?」
な、何だ?
先に風呂を借りて、シャワーを浴びた後。
シャツに腕を通してジーンズに足を突っ込んでから髪を拭っていた所、ドアを隔てて向こうから雄叫びが聞こえてきた。
思わずドアを開いてみる。と、ラビが携帯片手に気炎を上げているところだった
「絶対、絶対渡さねー!」
「…………、」
…………? 何を? 誰に?
そのまま観察しているとラビは乱暴にボタンに指を叩き付け、どれだけ腹を立ててるのか知らんが肩を上下させていた。
暫くの後顔を上げ、俺を見て顔色を変える。
「…………ユ、ユウ…………」
「風呂借りたぞ。誰だ? 相手」
お前が派手に怒鳴りつけてた相手。
「あ、ああ、うん、ティキの奴」
「ああ…………」
話は全く見えないし別にそれ以上の詮索もすべきでないとは思うが、何となく納得する。人の逆鱗に触れるのが得意そうな奴だしな、あいつ。
俺の携帯にもまた遊びに来る様に促すメールが来てたが…………限りなく嫌な予感しかしない。きっちりセクハラ? される度にシメてるのに全然懲りる気配がねぇのはどういう事だ?
ラビは俺に背を向けて風呂入るだとか何だとか、独り言のように呟いている。
…………? 何やってんだ?
「…………何でお前そんな猫背なんだ?」
腰痛めるぞ。
「あ゛っ…………や、何でもないさ!」
…………?
そのままラビはカニ歩きでずっと俺に背を向けたまま、風呂場へ向かっていった。…………何だあれ。
「…………変な奴…………」
ドアが閉められラビが姿を消した。
まぁいいか、と思い直してリビングに入る。と、机の上に置いてあった携帯が、ビカビカ光っていた。着信だ。
小さな画面に出てきている番号は登録されていない、知らないものだったが特に気にはしない。
「…………はい?」
『ああ、神田君、遅くにごめんねー』
「…………あ?」
コムイだ。
「何だ?」
『いや、ちょっとね。ラビに連絡つくかな、と思って』
「ラビに?」
そりゃ、まぁ…………壁一枚隔てて向こうに居るが。
『休み明けのLHRに必ず出席するように伝えておいて欲しいんだ。文化祭の件だよって言えば分かるんじゃないかな』
「? 分かった。あいつが風呂上がったら伝えとく」
俺が快く引き受けてやったのに、何故かコムイは、
『え゛っ…………、…………!?』
何やら妙な声を上げて、沈黙した。
「ん? おい? もしもし?」
電波障害か?
『…………、…………。ラビ、そこにいるの?』
「いや、今はいねぇ。風呂入ってる」
『…………聞いていいかなぁ。今何処にいるんだい?』
「ラビの家」
『…………………………………………。』
「おいコムイ、用が終わったんなら切るぞ」
『あ、いや、用っていうか! いやもう何ていうの!?』
…………何だか知らんがコムイが妙に慌てている。
「おい?」
『…………まぁ、そのあれだよ。不純異性交遊がどうだのなんて野暮な事はこの際言わないけど…………』
「は?」
『…………気をつけてね?』
「…………おい?」
不純異性交遊? 誰と誰が?
『じゃあね、お邪魔しましたー』
「あっ」
…………切れた。
何だあいつ。
訳分かんねぇ。
…………ま、いいか…………。
「…………っぶねー…………」
ユウは俺の理性と自分の貞操の為にもフェロモンダダ漏れは止めるべきだ…………!
…………あー、まぁ、俺がボコられて終わるだけだろうけど…………。
…………色っぽい、よなぁ…………。
何が駄目だったってアレだアレ、明らかに晒し未着用なあの…………
あああああ止めろ止めろ止めろ考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ!!
「うおおおおおお!!」
変な方向に熱暴走しそうになった頭を取り合えず壁に打ちつけて何とか宥める。頭が変形する前にやめとこう。
…………痛…………。
「…………あ、そういえば」
さっき学校の、コムイの机の上の電話番号からの着信があった。
ティキの電話の所為でちょっと忘れてたけど…………
あれ一体何の用事だったんだ?
あとで折り返すかぁ…………。
その後俺は、ユウから伝言を聞き、そして「不純異性交遊」との単語に思いっきり頭を壁に打ち付ける事になった。
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