「ッ!」
「何だ?」
外を覗いていたモヤシが、突然舌打ちした。
「ラビに勘付かれました!」
「!」
「こっち見てましたからね、確実に気づかれましたよ」
「どうするんだ」
「逃げます」
モヤシの返答は実にシンプルだった。
だが何処へ逃げるっつーんだ。
さっ、と背を向けて部屋から出て行くモヤシに大人しく従い(何で俺は従ってんのか、たまに分からなくなるが)、科学準備室から抜け出す。
そのまま科学室を早足で突っ切ったモヤシは廊下に顔だけだして外を伺った。
「誰もいませんね」
モヤシはそう言いながら廊下へ出た。小走りで階段を駆け下り――――――
「いたぞ!!」
「「!!」」
そして丁度、下から登ってきたデビットと鉢合わせした!
更に下にはラビと、離されて息を荒らげているジャスデロの姿もあった。
ああこれはもうゲームオーバーか、と俺が観念していると、
「デビット」
にこり、とモヤシが笑った。
その笑顔には覚えがある。俺と殴り合う前、大体こいつはこういう顔をしている。物騒な笑みだ。
「恨まないでください…………ねっ!」
「っ!?」
「へっ!?」
ドッ!
「おまっ…………!」
一言言い置いたモヤシは、それはもう情け容赦無くデビットの胸板を蹴り飛ばし(足裏全体に体重を掛ける、俗にいうヤクザキックだ)、デビットを突き落とした。
「てめぇぇぇ! 何しやがる――――――!」
「う、うわぁぁぁっ!」
突き落とされたデビットはそのまま後ろにいたラビを巻き添えにして、踊り場に転げ落ちた。ラビを下敷きにしてもがいている。
余りの事に呆然としていると、
「何してるんですか、早く行きますよ!!」
数段を駆け上がってきたモヤシが俺の肩を掴んでまたもや引き摺った。引き摺られると痛いので早々に走りだす。
走りながら、
「お前…………鬼か」
「君だけには言われたくありませんね、僕の顔の形変えようとした癖に」
あれは喧嘩してたからだろうが!
幾ら何でも普段他人にあんなにえげつない真似はしねぇぞ俺は。
「早いところ隠れましょう、追いつかれないとは思いますけど、厄介ですからね」
…………まるで罪悪感も何もなさそうなモヤシに、思わず溜息をついた。
校内に入って階段を一目散に目指す。科学準備室は二階だ。
階段を駆け上がり、踊り場まで着いたとき、何時の間にか先頭を走っていたデビットが叫んだ。
「いたぞ!!」
マジで!?
上を見れば確かに一階に降りて来るつもりだったんだろう、二階から数段降りた所で足を竦めているとユウと、アレンの姿。
俺達の勝ち、そう言おうとした瞬間――――――
「恨まないでください…………ねっ!」
「っ!?」
「へっ!?」
一方的に宣言したアレンが、デビットを蹴り落とした!
「デ、デビ――――――!?」
「う、うわっ!」
真っ逆さまに落ちてくるデビットに押される形で俺も踊り場で転げる羽目になった。お、重い…………
あっという間に蹴り落としたアレンと、ユウは二階の廊下の先へと走り去っていった。
「〜〜〜〜〜〜!!」
「だ、大丈夫さ?」
何だあれ、マジで容赦ねーさ…………
「あの野郎――――――!!」
俺の上から飛び起きたデビットが地団駄を踏んで頭を掻き毟る。
意外にダメージは少なかったらしい。
「デ、デビ、大丈夫?」
「おお大丈夫だぜ。だけどあの野郎、絶対捕まえてやる――――――!」
あーあ…………
だけど、幾ら何でもやり過ぎさアレン…………。
喧嘩慣れしているデビットだからこそ空中で受身取るなり出来たけど、普通の生徒にあれをやったら怪我させるだろうさ。
「…………早い所捕獲するしかないさねー…………」
…………逃げてるのは猛獣二人だから、正直自分の身が怖いけど…………
立ち上がって、二人が逃げた場所について、顎に手を当てて考えた。
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