12月のある日の屋上。

「あー寒。クソ寒。死ぬわ俺」
「ヒッ!? デビ死んじゃだめ!」
「悪ぃジャスデロ、俺はもう…………駄目だ…………」
「…………何やってるんですか?」
「デビットがお亡くなりかけ。寒いんだって」
「へー」

 心底どうでも良さそうに声を声を上げるアレンは何処で手に入れたのか肉まんを食べていた。
 ユウも呆れた顔で自分のおにぎりを食べている。

「寒いんだったらコーラじゃなくて暖かい物を飲めばいいのに」
「なー」

 でもまぁ、確かに寒い。今朝は雪が降ってアスファルトがうっすらと白くなっていた。

「神田は留学準備、順調なんですか?」
「…………まぁな」
「でも四月には間に合わないけどね」
「…………」

 ユウはまだ、留学に必要な語学の要件を満たせていない。
 けどむこうの大学の入学時期はその大学でまちまちだからまぁいいんだろう。
 時折ユウはうちに泊まりにきて英語の勉強をして行く。最近ではアレンやジャスデビが一緒にやってくる事も多かった。

「受験生は大変ですねー」
「他人事みたいに言ってるけどアレン、お前だって二年後はこうだぜ?」
「面倒です…………どうせなら就職したいなぁ」

 アレンがうんざりと溜息をつく。著しい成績不振者達はそんなアレンの言葉に頷いていた。ユウ、頷いてる場合じゃないよ。

「あー、俺も俺も。大学なんざ行きたくねーわ」
「ヒヒッ!? 駄目だよデビ、伯爵に怒られちゃう!」
「でもよー、俺が入れる大学なんてそもそも行っても意味ねぇ大学だと思わねーか?」
「そこは努力するところさ」

「努力」なんて欠片程もしてない俺が言うのもどうかと思うけどね。

「ラビ、ところで年末年始の予定は?」
「いつも通り。一人でのんびり年越しさ」

 家族は年末年始だからって帰って来れる程暇じゃない。
 そもそも両親は年末年始だなんて事自体忘れてるだろう位に忙しかった。世界中を飛び回ってる祖父も同様だ。
 それでも毎年、誕生日と新年には多分前々からの予約で送られるようになってるだろうメールのメッセージカードと、それから幾らかの「お年玉」が振り込まれてはいる。

「神田の家は?」
「うちは面倒くせぇぞ」

 いかにも、だ。
 アレだけの大きい家、絶対に色々やるんだろう。来客も多そうだし。
 …………初詣に誘うのは無理そうさね。着物とか着たら、さぞかし綺麗だろうなぁ…………。
 俺がうっとりと和装のユウの姿を妄想していると、デビットがアレンに尋ね返していた。

「そういうお前の家はどうなんだよ」
「僕は英国へ。家族と過ごします」
「じゃあクロスは一人なん?」

 アレンはクロスの家に居候してるから、そうすれば一人だ。

「まさか。あの人が一人寝なんかするもんですか。邪魔者が居なくなってこれ幸いとばかりに女の人が日替わりで来ますよ」
「日替わりじゃなくて」
「時間替わり?」

 いつの間にか復活したデビットとジャスデロが肩を竦めて言った。ユウはドン引きした顔をしてる。
 
「その点いーよなお前んち。エロビいらずで」
「何が良いんですか何処が良いんですか。なんなら変わりますよ」
「お断りだぜ」

 まだ続くその話題にユウは耳を塞いで「何も聞いてません」のポーズだ。

「そいやラビだって似たようなもんだよな?」

 黙れデビット!!! 頼むから黙ってください!!!

「ヒッ…………まぁそれはともかく、デビ、暖かいの飲もうよ」

 ジャスデロナイス!

「年明けたらどっか遊びに行きます?」
「暖かいところがいいさ。室内なら何処でもいいし」

 休みに入ったら暫く皆とは顔を合わせないだろうし、冬休み中か明けた後の休日か、まぁどっちでもいいけど遊びに行くのも悪くない。

「お前、家にいるのか」
「え? ああ、うん」
「じゃあ、俺ん所来るか?」
「え?」

 え? え、ええ?

「新年会やってるから食い物は一杯あるぞ。百人単位から用意してあるから一人くらい混ざったってバレねぇし。ピザばっか食ってるよりは体にいいぞ」
「えーいいなぁー」
「モヤシ、てめぇは来るな。お前が来たら幾らあっても足りないだろうが」
「えー酷いですねぇ、差別ですよ差別。まぁどっちにしても行けませんけどね、里帰りしますし」

 ユウはちょっと安心したような顔をした。確かにアレンが行ったら食い物なんて幾らあったって足りないだろう。

「えーと、本当にいいの?」
「別に大丈夫だろ」

 ユウは極めて軽く言う。
 じゃあ、お言葉に甘えてみよう…………かな…………?



 そして訪れた先のユウの家で、俺は色々と思い知る事になる。





 キャメロット家まとめ。

 長男:ティキ
 長女:ルル・ベル
 次男:ワイズリー
 三男:デビット
 四男:ジャスデロ
 次女:ロード
 父親:シェリル
 祖父:千年伯爵

 凄い怖い家!


 小説頁へ