「…………馬鹿共が」

 吐き出した己の言葉は、随分と苦味を伴っていた。



 久しぶりに本部に来てみれば、やらされたのは咎落ちの始末。
 それが裏切り者の末路だというならまだしも、無駄な実験の材料にされた子供だと思うと流石に銃も重かった。
 そうは言ったところで咎落ちになれば最早救う手立てはない。二十四時間後を待たずに、早く眠らせてやるのがせめてもの情け。

「ありがとうございます、クロス元帥。無駄に本部に被害が出るのは避けたかったので」

 ―――――――無駄と、言ったか。
 無駄なのは貴様等のその実験だと、怒鳴りつけたいのを堪えて部屋を出る。
 薄暗い回廊を足早に歩き、こうなれば夜明けを待たずに本部を出るべきかと考えていた所に、ふと小さな影が佇んでいるのに気が付いた



(…………ガキか? ――――――!?)

 次いでその場が咎落ちを監禁していた部屋であることに気づいて思わず歩みが止まる。
 目を凝らすとそれが間違いなく人間であることは分かった。

(監禁されてるガキ…………じゃないな)

 一人の適合者の娘が監禁状態にあることは知っていた。
 しかし、その子供とも違う。

 あれ、は。

「――――――…………」

 瞬間。

「――――――!!」

 ――――――ぞくっ

 本能的に、飛び退り距離を取る。

(なん、だ!?)

 銃が、武器が、反応している。
 それに対してか、その子供がゆっくりとこちらを向いた。
 漆黒の髪に同色の瞳。
 その瞳にはその姿の幼さに反して、酷く大人びた冷ややかな色が浮かんでいる。

「――――――邪教の犬め」

 一瞬の間を置いてから、そう吐き捨てた。
 子供が吐き出した言葉は明らかな敵意と怒りが含まれている。

「咎無き幼子を殺してそれが神の意思だと言うのか。――――――ならば貴様らの言う神とは悪鬼邪神の類か」
「…………!」
「いつか貴様らには、天罰が下るぞ」
  
 心底不快そうに首を振り――――――それきり興味が失せたとばかりに踵を返し、奴が去っていく。
 結局その背が回廊の奥に消えるまで、俺はその背を拝むだけだった。




 そして翌朝、同僚の弟子として紹介されたガキに俺が思わず黙り込んだのは、当然の成り行きだった。




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