心臓が、体の細胞一つ一つが、酷く高鳴っている。
傷つけられた僕の左腕。だけど、ああ、それがまだ僕を駆り立てる。
――――――我等の敵を、打ち倒せと――――――
「先程は、どうも」
大元帥の方々との謁見を終えた僕は、案内役のリナリーが用事という事で彼女と別れ、一人修練場を訪れていた。
そこに先程やりあったばかりの彼を見つけて、思わず皮肉めいた声を掛ける。
「――――――神田、でしたっけ?」
「…………」
虚空に向かって剣を振るっていた彼は、僕が声を掛けると心底嫌そうに眉根を寄せ僕を一瞥し、そしてまた何事も無かったかのように自分の鍛錬を始めた。
「無視ですか? 酷いですね」
「――――――黙れ」
低い声。明らかな拒絶と、―――――――侮蔑。
…………思わず、カチンと来た。
「俺はお前みたいな奴が一番嫌いだ」
「…………酷いですね、僕の事何も知らない癖に。大体僕の名前も知らないでしょう? 貴方」
「んなもの興味ねぇ」
――――――…………、
「覚えてくださいね、僕はアレン・ウォーカーです」
僕は、左腕を発動させた。
神田は流石に鍛錬を止めて僕を僅かに目を細めるようにして睨みつける。
「折角ですし、お相手願います。先程の続き、しましょうか」
左手を大きく振りかぶって――――――叩き付けた。
床が砕け、だけどそこに捕らえるつもりだった彼の姿は無い。
一段高い所に飛んで避けた彼を僕も眼を細めて睨み。
――――――そして彼と僕は、激突した。
倒せ、倒せ倒せ倒せ倒せ打ち倒せ
我等の怨敵を、根絶やしに――――――
左腕が、そう命じる。
「はっ、そんなのが当たるかよっ!」
僕が左腕を壁に叩きつければ、それを避けた神田がそんな憎まれ口を叩いた。
返す刀が腕を掠める。―――――――力の差は、厳然たる事実として僕等の間に横たわっている。
だけど、圧倒的な不利な状況下で、
ぞくぞくする。
壊したい壊したい壊したい壊したい愛したい。まるでアクマに感じるような不思議な思い。
熱に浮かされたような高揚感。なんて不思議な、なんて当然の感覚。
―――――――薄っすらと、僕は微笑んだ。
左腕の発動を解いて、改めて彼に向き直る。
そしてなるべく優雅に見えるように、腰を折った。
彼はまだ厳しい目で僕を睨みつけている。
「―――――――こんにちは、愛しき同胞」
「―――――――消え失せろ、邪教の使徒」
(―――――――そして此処から始まるは聖と邪の物語―――――――どちらが聖でどちらが邪など、些細な問題でしかないのだ、所詮。)