教団本部、食堂にて。
「…………何の騒ぎですか?」
「あら、アレン君、ラビ。お帰りなさい」
「ただいま、リナリー。…………あれ、どうしたんさ?」
組んで任務に当り、そしてまさにたった今報告を終えて帰ってきたばかりの俺は、隣のアレンと顔を見合わせた。
食堂の中央辺りに人だかりが出来ている。
「ええ、あれね」
リナリーが苦笑顔でちら、と振り返った。
「バチカンの信者の方から、新酒が送られてきたんですって。ファインダーの皆とか、科学班の皆がね…………」
「はー。ワインですか」
…………露骨に嫌そうな顔をしたアレンには、突っ込まないでおいた。理由は簡単に察せられる。
「へー、俺もちょっと貰おっかなー」
「ラビ、飲むなとは言いませんけど酔っ払いになるまで飲まないで下さいね。そんな事したら此処の最上階から逆さ釣りにしますからね!」
「…………」
…………超怖いんだけど、アレン…………。
「リナリーは? 持って来るさ?」
「私はお酒はちょっと…………」
「あいよ、了解〜」
俺は一人アレンとリナリーの傍から離れ、人だかりの方へと向かった。
「あっ、ラビさん!」
「うん? んーと、ゴズだっけ?」
声を掛けられて振り向いた先には巨体のファインダーが一人。一度は聞いたはずの名前をさして苦労せずに思い出し、声にした。
「ちょ、丁度いい所に…………」
「?」
ファインダーからは悪鬼のように言われ嫌われているユウを、珍しくも好いている。
巨体に似合わず、気が小さいのも知っている。
「かっ、神田さんを止めてくださいっ!!」
「…………へ?」
…………そんな相手から出た思わぬ名前に、俺は目を見張り、そして、
「ユ…………ウ…………」
人だかりの合間から覗き見たその惨状に絶句した。
空き瓶が、1、2、3、4、…………9,10?!
机に突っ伏しているのは、長い黒髪ですぐにそうと知れるユウ。
その机の傍の床に転がっているのは、何人ものファインダー。
何でこんな状況になったか、はまぁ大体察せられる。
ユウが売られた喧嘩を買って、だけどファインダーがユウに腕で適う訳ないから飲み比べって事になったんだろうさ。
「止めて、っていうか…………もう止まってるさ…………」
ユウはけして酒に弱い訳じゃない。それはたまに一緒に飲んだりするから、知ってる。多分俺より、強い。
だけど人間には限度ってものがあって…………。
「…………ゴズ、俺ユウ引取るからそっちの転がってんの頼んでいい?」
「あっ、はい、分かりました!」
大柄なゴズが転がってる奴らを担いでいく。それを尻目に俺は机に突っ伏したユウに近寄った。
「ユウー、ユウちゃーん」
軽く声を掛けて、肩を揺さぶる。…………反応なし、と。
こりゃ相当さ…………。
熟睡してたって人の気配でぱっと目覚めるユウにしちゃ、本当に珍しい。
「よっこい、せっ、と」
「…………う、?」
「あれ? ユウ目醒めた?」
担ぎ上げたときの衝撃でか、ユウがゆるゆる瞼を持ち上げた。
「…………俺はまだ飲める…………」
「…………あー、はいはい。早く寝ましょうね」
…………駄目だこりゃ。
「飲めるっつってんだろ…………」
「…………ユウ、酔い過ぎ」
ふわり、と鼻腔をくすぐるのはワインの香りだ。…………匂いだけで酔うさ…………
「酔ってねぇ!」
「そう言う事言うのは酔っ払いの証さね」
「酔ってねぇっつってんだろ!!」
「――――――!?」
そう叫ぶや否や、ユウは…………
俺にディープキスをっ…………!?
よっしゃぁぁぁぁ!!!!
…………じゃなくて!!
いやいやいやユウさん嬉しいけど嬉しいんだけど駄目だってここ食堂食堂、さっきから皆見てるよ? めっちゃ見てるよ? 俺は構わんけどユウが構うんでしょ? いつも人前で手
「いい加減にしやがってくださいそこの酔っ払い」
ガンッ!!
アレンが発動した左手で、ユウの後頭部を殴った。
「ちょっ…………左は酷いさ!! ユウ酔ってるだけなのに!! 益々お馬鹿になっちゃったらどうするんさ! それはそれで可愛いけど!!」
「公衆の場で泥酔した挙句に破廉恥な真似に及ぶほうが悪いです。あとラビ言ってる事変ですよ」
うん。正論。
「続きは自室でどうぞ、馬鹿ップル」
…………お言葉に甘えさせていただくとします。
ユウをお姫様抱っこにして(だってこんな時じゃなきゃ絶対させてくんないし)、ユウの部屋にたどり着いた。
鍵の掛かってないドアを、行儀は悪いけれど足で開ける。
入ってからまずはユウをそっとベッドに横たえて、それから、
カチャリ
ドアと鍵を閉めた。
ベッドの上のユウは、横を向いて小さく蹲っている。
「ユウ」
「…………」
「ユーウ、」
「…………うっせぇ」
あ。起きた。
「もー。飲みすぎさぁ。幾ら強いつっても、セーブしなきゃ」
「チッ…………分かってる」
分かってないからこうなるんじゃなくて? と聞こうと思ったけどやめた。
死にたくないし、折角二人きりなのにわざわざユウの機嫌を損ねることも無い。
俺はわざとらしく言った。
「あーあ。俺も飲みたかったのに、ユウちゃんがぜーんぶ俺の分まで飲んじゃうんだもん。いいないいなー、ずるいさー」
「…………」
面倒そうに片方の目だけ開いたユウの表情は明らかに「面倒くせぇ」と書いてある。
「…………何が言いてぇ?」
「…………運搬料込みって事で。ユウに酔わせて?」
「…………この送り狼が」
「知ってて送られてくるユウも相当さ」
「斬るぞ」
「足腰立たないくらいに酔ってるのにそんな事言って…………」
つつ…………とユウのウエストラインをなで上げる。
「…………熱い、」
「その気になってくれた?」
「酒の所為だ、馬鹿」
「えー…………」
「…………どうにかしろ」
「…………了解v」
ねぇ君は知ってるかな。
どんな極上の美酒よりも、君が俺を酔わすという事を。
中村由里子へ相互記念に・・・ってああああああ!
私って奴はぁぁぁぁ――――――!
中村様すいませんすいませんごめんなさい!
マジで鈍間の亀で申し訳ございませんでした!
(画面に頭ぶつけた)