頭が痛ぇ。
上がってきた報告書に、思わず頭痛を感じて頭を抑えた。
何だこりゃ。
「ったく最近のガキ共は碌な事しやがらねぇな」
「その台詞、自分がジジイだって認めてるようなもんだよ」
揶揄する様子で笑うコムイ。だがその目の奥は全く笑っていないあたりに、奴の怒りの深さを感じる。温厚な奴程怒らせると怖いの見本だろう。
そりゃ、被害にあったのは奴が溺愛する妹と同レベルで可愛がってる娘だというから(恋人かと思ったらそんな訳ないだろうと速攻で反論を食らった)まぁ分からなくも、なくもないが。
「理事長は何だって?」
「男子生徒は退学処分。こっちは――――――」
パサッ
放り出した書類が軽い音で机の上に落ちた。
「お咎めなしだが、本人が持つか? 好奇の目に十五の小娘が耐えられるのか」
「神田君はね。その程度どうともしないさ。ただね、彼女は今回武器を持たない人間を竹刀で攻撃した自分自身を恥じてる。だから、」
「自主退学したい、ってか」
そりゃ随分ご立派な武士道精神だ。
だがしかし、武器の有無を抜かしても女一人を男が数人掛かりで押さえつけるような状況なら正当防衛で良いだろうに。
「上は慰留しろとさ。そりゃそうだろうな、折角遠いところ特待で呼び寄せてんだ。このまま辞めさせるには惜しい」
被害者は入学間もない一年生の、十五の小娘。
加害者は三年の、問題なきゃ来年には此処から卒業していたはずの奴らだと言うのだから本当に救えない話だ。
「大体――――――まだ認めてないんでしょ?」
眼鏡の奥のコムイの瞳が細められた。
「認める訳ねぇだろ。んな事したら自分の人生が一巻の終わりだっつー事位軽い頭でも考えられる」
「だろうね」
切っ掛けは些細な事だった。少なくとも俺たちから見ればだ。
学校側としても今年度の女子剣道部には期待を寄せていた。それは今年の春に中学時に剣道で全国制覇している生徒を特待で入学させている事も勿論大きな理由では在るが、全体的に部員の質が高かったからだ。
故に。これまで男子生徒の部に優先的に与えていた各施設の使用権を(むしろその優先事態が問題だったのは明白だが今更取り沙汰する事でもない)各部活平等にした。
それを良しとしなかったのはこれまで優先権の恩恵に預かっていた各部のニ、三年の男子部員であり――――――
挙句の果てに、その原因を特待で入学してきた女子剣道部の一年生、一年C組神田ユウだと断じ、呼び出した上でシメようとした――――――とは奴らの弁。
しかしそんな程度の話で無かった事は誰の目にも明らかだ。
「呼び出してシメるのだけが目的なら避妊具はいらねぇな。自分の女と使うってのも苦しい良い訳だ」
「ついでに言えば性玩具もね。――――――全く!!」
不幸だった事はその神田ユウが、飛び抜けた美貌を持っていた事だろう。今はまだ幼さを残すが、あれは数年もすれば確実にイイ女だ。
性欲だけは有り余る輩が最初から「それ」が目的だったという事等簡単に察しが付く。
「おい。お前からも説得しろよ。あの手のタイプはどうせ強情で頑固だ。何を諭そうが聞き入れやしねぇ」
「そりゃ勿論昨日からずっと言ってるよ」
最大の問題は、加害者の処遇などではなく――――――それは最初から退学処分で決定済みだ――――――被害者側のメンタルケアと学校、部活への慰留の件。
ったく、俺が生徒指導の年に面倒な事件起こしやがって、と心の中で奴らを罵倒する。
「…………時間だ、」
ふとみた時計が予定の刻限だ。
溜息混じりにファイルを掴んで立ち上がり、研究室を抜ける。
これから理事長学校長担任、本人と保護者を交えて六者面談だ。初めてのケースだ、こんなのは。
そして向かった先で、まだ俺が予想すらしていなかった事を決心する訳になるのだがそれはまだ誰一人として知る者はなかった。
<終>
本編の登場人物頁をみないとまずなんの事か分からない作品。
二年前の「事件」の事です。
この時点で顔見知りのはずなのに本編開始時にはお忘れになっていらっしゃる神田嬢。
まぁそんなこともあるよね。
リクエスト頂いた皆様、ご覧頂いた皆様ありがとうございました!
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