<Sweet dream>(原作設定、アレン×神田嬢)
「…………はぁ、」
思わず零れた溜息。
お腹は一杯、任務は無し、お風呂も入ったからあとは眠りに落ちるだけ。
だけ、なんだけど…………。
「…………」
思わず最後の祈りを籠めて時計を見上げた。
只今、二十三時五十分。あと十分で今日――――――「二月十四日」は終わる。
「予想はしてたけどね…………」
今頃彼女はもう夢の中だろう。
心の中で、大人な僕は「仕方ない」と言うのに、子供の僕は「でも、」とそれに未練がましく文句を言う。
仕方ないし、予想も着いてたことだ。
僕に監視――――――リンクが着いてから、神田は滅多に僕に近寄らなくなった。
人前で「そう」なのだと知れるような事を彼女は厭ったし、僕は僕で彼女にまで嫌疑が及んだら――――――そう思うと、とてもじゃないけど近寄れるような状況じゃなくて。
「…………リンクの所為だ…………」
そんな文句を小さく零した。因みにそのリンクは今ジェリーさんに呼ばれて何処かに行っている。でも、何時どのタイミングで戻ってくるかは分からない。その時僕が此処に居なかったら大事だろうし、その上に神田のところにいました…………なんてバレたら、神田が何を言われるか。
「…………しょうがない、しょうがないんですよ…………」
ツキツキ、ズキズキ痛む胸の中の事なんて気付かないフリをして、もう寝てしまおう――――――…………。
そう心を決めた丁度その時。
「!」
「ティ、ティムキャンピー?」
何に気付いたか、それまで僕の頭の上を飛び回ってたティムキャンピーが突如として窓に向かってダッシュ? した。
そして何故かゴンゴン! と大きな音を立てながらガラスの窓に体当たりを繰り返す。
「ちょ、ちょっと! どうしたんですか? 窓が割れちゃいますよ、」
…………外に出たいのかな…………?
とりあえず窓を守る為に開けよう、寒いけど…………そう思いながら開くと。
ヒュンッ!
「!!」
突然目の前を黒い何かが横切った!
「わっ! …………なっ、」
ティムキャンピーは開いた窓から外に出ようとはせず、僕が窓を開けた事により目的は完遂したとでも言うかのようにベッドの上に降りる。
突然の訪問客のほうは、僕の頭上高くの辺りで羽根をパタパタさせながら飛んでいた。
「え、と…………、あ、神田のゴーレムですね?」
それは教団支給のゴーレムだった。その表情? で判別するとゴーレムは大きく頷くようにして動き、その表紙に頭にでも載せていたのか、何かを振り落とした。
「っと、」
それは丁度僕の腕の辺りへ。
何だ何だとそれを手のひらの上に拾い上げる。
…………それは、小さな、大人の手の中にならば容易く隠されるだろうサイズの、薄いブルー色の包み紙に包まれた…………、
「え? え、何ですかこれ?」
その入り口を綴じていたリボンを引き抜く。中から零れだしてきたのは、小さなチョコレート数粒とクッキーが数枚。
突然の事に思考停止して、これが誰からの何なのか、理解できないでいる僕の前に突然ティムは移動した。そして、ある光景を映し出す。
それは珍しく、彼女が食堂の厨房に居る、そんな後姿だった。
滅多に見ないエプロン姿。長い髪を頭上に掲げ、白い布で髪を覆っている。
そして、その手元には小さな欠片がいくつか見えた。
今はもう何かを作ってる訳じゃないみたいで、ちらちらと覗くのは僕が今持っている包みと同じラッピング材。
表情すべては見えないんだけど、その口許は薄っすら微笑んでいるようにも見えた。
包み終わったのか、その包みを神田は両手で大事に持ち上げて、確認するかのように見ている。
「…………、」
そして、その包みは直ぐ傍に居たゴーレムの頭に、そっ、と乗せられた。
「…………もしかして、僕を焦らして愉しんでました?」
まさかゴーレムにそんな機能はないとは思うけど。
でも強ち邪推ではないのか、神田のゴーレムとティムキャンピーは飛びながらくるくると回っていた。実に愉しそうだ。
「もう…………酷いなぁ、」
軽く二つを睨んでからベッドから立ち上がった。今頃きっと彼女は僕から何のリアクションも無かった事を不安に思っているはず。
それでも逢いには行けない不甲斐ない僕は、せめて彼女に愛と感謝を伝えるべく、机に向かったのだった。
<終>