<Dessert talk>(リナリー×神田(嬢?) 現代パラレル)


 ショートケーキ。ガトーショコラ。ベイクドとレアの二種類のチーズケーキ。フルーツタルト。バニラ・チョコ・紅茶・抹茶の四種類のシフォンケーキ。ロールケーキ。クレーム・ド・ブリュレ。パンプティング。メープル・バニラ・ハニーの三種類のワッフル。サバラン。マフィン。アップルパイ。フィナンシェ。苺・洋梨・バナナ・ナッツ・プティングの五種類のタルト。シュークリーム。チョコエクレア。ミルフィーユ。カスタードプリン。りんごのプディング。ババロア。ティラミス。サバラン。季節の果物のゼリー。十種類のアイスクリーム。マシュマロやシューにつけるチョコレートファウンテン、エトセトラ。

「…………パーフェクト、だわ」

 その光景に思わずうっとり、呟いた。

 此処は学校最寄り駅から数えて三つほど電車に乗ったところにある、某外資系有名高級ホテル。
 最上階のラウンジで定期的に開催されているデザート・ビュッフェはその質でも予約の取りづらさでも有名。それがバレンタイン特別メニューともなれば尚更。

 …………ちょっとキツイお値段だったけど、当たりだわ…………

 リナリーは第一皿目に数種類のデザートを載せながら、満足そうに頷く。
 周りはどちらかといえばOL風かマダム風の女性達が多い。
 自分自身、ちょっとおめかししてきたとは言えまだまだ気後れしそうなところも、あるといえばある。

「ねぇ、神田?」

 高揚した気分で、同意を求めて振り返ると、

「…………嫌がらせか」

 其処に居たのは早くも戦意喪失、疲労困憊といった表情の神田がいた。









「もう、どうして嫌いなのかしら。美味しいのに」
「お前の好みを俺に押し付けるな。お前だって獅子唐嫌いだろ」
「だって獅子唐辛いじゃない」
「それが良いんだろうが」
「えぇ〜? それだったら甘いのがいいわ」

 私達の会話は何処までも不毛で平行線。だけど別にいい。だって話に別に結論だとか、打開策だとか、そういう物は求めてないから。
 
「大体神田、全然食べてないじゃない。そんなのじゃ元が取れないわ」

 神田の前にはコーヒーカップが一つと、ハムを挟んだ小ぶりなサンドウィッチ、ほんの少しのペスカトーレ。
 私がそういうと神田は眉根を顰めた。

「現金な事言うな。不満なら俺の分までお前が食え。っていうかどう考えても連れてくる人間、人選ミスだ」 
「そう? 私の中ではベストな選択なんだけど」
「他にいるだろ。例えば――――――モヤシとかか?」

 神田が疑問系で挙げた人の名前に肩を竦めて見せた。

「あいつならしっかり元とるだろ」
「その場合今此処にいる人の全員の恨みの視線を浴びるわね」
「…………。それもそうだな」

 暫く天井を睨むようにして考え込んでいた神田は頷いた。
 アレン君の食欲なら確かに元は取れるだろうけど、同時にそれは此処のビュッフェがビュッフェで無くなる事を意味している。
 其れは流石に周囲の人に申し訳ないし、多分出入り禁止になるでしょうね。


「ならラビは? あいつらなら見目もそこそこ整ってるし連れて見せびらかして歩くには丁度いいだろ。口開かなきゃだけどな」
「そこそこ…………」

 学内でナンバー2の人気を誇ってるのに「そこそこ」扱い。そこに神田の関心の無さと余裕が見て取れる気がした。

「そうね、ラビなら結構食べるでしょうし。でも嫌よ」
「?」
「人に見られて噂になったら嫌だもの」
「論外か?」
「いいえ、対象外なのよ」
「成程」

 簡潔に応えると神田が納得した顔をした。

「どうして神田はそうやって私を試すような事ばっかり言うの?」
「お前の勘違いだろ。試してなんかねえ」
「あら? じゃあどうしてさっきから上げる人が全然神田と違うタイプの人なの? 私のタイプは神田だって言ってるじゃない。せめて上げるならもうちょっと近い人にして」
「妙な趣味だな」
「自分で言う?」

 さっくりとフォークの先で割ったケーキ、その小さいほうの欠片を神田に向かって差し出す。
 微妙に嫌そうな表情をしてから、渋々といった顔で口を開いた神田の紅い唇にスポンジとクリームの塊を押し付けた。
 ほんの少し紅を汚していく白に、くつり、と笑いがこみ上げる。
 肩を少し震わすと、諦めたような顔をした神田が、

「…………まぁ、お前が悪趣味で良かったと思うべきか」
「そうね。喜んでね?」
「微妙な所だな」






<終>