「ふぁ…………」
目が覚めても眠気が取れずに生欠伸した。
昨日、離れて暮らす親父に「ストーカーが出来たかも知れない」とメールを入れたら半狂乱の電話が掛かって来て、延々と話していて遅くなったからだ。
ベッドから降りてそっ、と外を覗く。…………取り敢えず、あの変な男は居ない。
よかった、まだいたら通報してやろうと思ってた。
さて学校、と考えて起き上がり、ふと思い出した。
『…………ねぇ、頼むから。じゃなきゃ、これだけは聞いて。明後日の朝は、学校休んで』
…………あいつがいたのが一昨日だから、明後日っつーの今日の事だ。昨日は一日姿を見かけなかった。何よりだ。
変態の言う事なんて聞き入れたくは無いが、だがあいつがもしどこかで見張ってたら…………。
しかし人を休ませてどうしようってんだ? まさかその間に押し込み強盗でもするつもりじゃねぇだろうな。
「やっぱ通報するか?」
でも今はいないしな…………。
学校で少し相談するか…………。
荷物を纏めて鞄に詰め、階段を駆け下りる。
変質者に捕まらないように、家の玄関から駅までは走り切ろう。
そう決めて、駈け出した。
胸に微かによぎった胸騒ぎなど、気づかない振りをして。
「――――――!」
「ユ、ウ」
「どうして、だってまだ早っ…………」
「――――――っああ、クソッ!」
駅まで後僅かの交差点に引っかかり、信号が青になるのを待つ。
この調子ならいつもの電車より一本早いのに乗れるだろう。
早く学校ついて、それから、それから…………。
信号が青になった。
道路の向こうからも人が足を踏み出している。
俺も一歩を踏み出したその瞬間、耳をつんざくような急ブレーキを掛ける音がした。
「――――――、」
止まらずに目の前に向かってくる、大きなトラックを前にして、だけど動けない。
「…………え?」
駄目だ、足が竦んで………、
恐怖に、固く目を閉じた。走馬灯なんて走らなかった。
「ユウっ!」
誰かの絶叫を、聞いた気がした。
「…………、」
衝撃は想像してたよりずっと軽かった。誰かに突き飛ばされたのと大差ないくらいだ。
「ユウ、大丈夫!?」
大丈夫な訳ないだろ、今頃死んで、…………ないな。
細く目を開く。
と、そこにいたのは、俺に付き纏ってきてた男だった。がっちりと俺は奴の腕の中にホールドされている。
「…………ストーカー、」
「あぁ、軽口叩けるんなら大丈夫さね、…………良かった…………」
「え」
今、どういう状況だ?
細くしていた目を全開にして、辺りを見回した。
俺のほんの二メートル右横では、大きなトラックが電柱と近くの店の軒先に突っ込んで止まっている。
ガラスの破片が刺さったのか、足から少しだけ血が出ていた。
「…………、」
一気に、周囲の喧騒が耳に入って来る。
何だ、この状況。
トラックを見ながら、今更ながらに震えが走った。
「…………良かった」
変質者は、そう呟いて俺をより強く抱き寄せた。
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