――――――三年前。
学園中等部第二校舎屋上。
「おいリナリー、知ってるか?」
「? 何?」
「俺達以外の兄妹って、一緒に風呂入らねぇらしいぞ」
「…………え?」
春の麗らかな日差しの下、座り込んでいた少女二人――――――リナリーとユウは真剣な面持ちで顔をつきあわす。
もう一人はやや離れたところから呆れたような何ともいえないような、そんな目で彼女達を眺めている。
「入る…………よな?」
「ええ」
「だよな…………うちもだ。でも…………」
そして二人の少女の視線はつつつ…………と離れて座っていた少女、モアへと向けられた。
「うちも入らないから。…………だから言ったじゃない」
「え? ええ?」
「じゃあ一緒に寝たりも…………」
「しません」
キッパリと言い放った彼女に、二人はがっくりと肩を落とした。
「ああああ…………」
「そうよね…………おかしいとは思ってたのよね…………」
おかしいとは分かってたの?
一人は心の中だけで呟く。
「だーかーらー、私が何度も言ったじゃない」
「それはモアん所は最近できた兄貴だからだと思ったんだよ!」
「そりゃうちの義兄さんは確かに姉さんの旦那さんだけど…………そういう問題じゃないわね」
「でもおやすみのキスくらいはするだろ?!」
「そりゃそれくらいはね…………でも一緒にお風呂入ったり一緒にベッドに入ったりペアルックで出かけたりはしないわ」
「「ペアルックは家も無い(わ)」」
…………無いの基準が分からないわ。
モアは溜息を付き。
「じゃあ他には? 何してるの?」
「えー…………」
「別にそんな何って事は…………」
「ねぇ?」
「だよな?」
「何って事があるからさっきのリアクションになったんでしょうが」
その言葉に二人は顔を見合わせ、
「えっと…………」
「ご飯食べに行くと分け合ったりしない?」
「ああ、やるな。どうせなら色んな種類食べたいしな」
「一つしかない物は必ずくれるのよね」
「な」
「あと具合が悪くなるとずっと傍にいてくれるよね」
「ラビはこの間それで試験サボったぞあいつ…………進級出来んだろうな…………」
「兄さんもこの間仕事を休んでついてくれたんだけど、その日学会だったみたい…………クロス先生が後で溜息ついてたもの」
「…………。」
「あ、そういえば俺自分で髪洗ったことねぇ」
「? どういう事?」
「ラビの奴、俺の髪触るの好きみたいで風呂はいると必ず洗うんだよな」
「ああ、そういう事ね。うちもちょっと前までそうだったわ…………って神田もしかして一人でお風呂入ったこと」
「無い」
「ああ、それで小学部の時の修学旅行、困ってたのね」
「…………。」
「あと服買ってもらうな。俺どういうのがいいのか全然わかんねーし」
「あ、確かに必ず一緒に買いに行くわね」
「ラビは結構一人で行って俺の分だけ買ってきたりするぞ? でもあいつ下着売り場行って良く追い出されないよな」
「ちょっ…………」
「? 何で一緒に行かないの?」
「だってあいつの好みレースとかフリルとかついてる奴なんだぞ。いらねーよあんな飾り。何かチクチクするしな。この間なんて、男物っぽい奴あるだろ? あれがいいっつったら泣いた」
「泣くの?」
「泣いてた」
「…………。」
思わずクラリ、とした頭を支えながらモアは思う。
全ッ然、どこからどうしたって、普通じゃないわこんなの。
「…………取り敢えず、」
そして溜息をつくながら、額を抑え。
「二人とも、お兄さんとお風呂入るのは今すぐやめなさい中学生にもなって。それから、洋服は自分で選びなさいよどうせなら。後神田はお兄さんに下着売り場に行かせない!」
「一緒に寝るのは?」
「駄目です。…………今週の土曜日、一緒に駅前行きましょう? そこで買い物すればいいわ」
「三人だけで? 兄さん許してくれるかしら…………」
「ラビは許すも許さないも何も付いて来るんだよなアイツ」
「ああもう妹離れしないお兄さんたちね!? あなた達一生お嫁に行けないわよ!?」
「や、嫁に行く気もねぇけど…………」
「私も。兄さん一人に出来ないし。兄さんにお嫁さんが来たら考えるけど…………」
――――――ああ、もう、このブラコンはっ…………!
〜〜〜〜♪
「あ」
「行かなきゃ」
昼休みの終わりを告げるクラシックが流れ始め、三人はバラバラと立ち上がり、それぞれ教室を目指す。
三人の一番後ろについたユウは、空を見上げ。
(…………風呂入ってるだけでこんなに引かれるのか)
(…………昔見せ合ってたのは、黙っとくか…………)
思わず遠い目を、した。
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