俺はずっと待ってた。
 ユウに相応しい、ユウを任せられるような男が現れるのを。一生現れないんじゃないか、と思わないでもなかったけどそれでも待った。
 でもユウに群がる野郎共はどいつもこいつもユウの容姿だけに惹かれた、躰だけを欲しがる虫けらみたいな奴らで、そんな奴らの欲望に歪んた顔を見ている内に俺は悟った。

 ユウを誰かに任せるんじゃなくて、俺がずっとユウを護ればいい。永遠に。俺ならユウを心底愛してる。この世の誰よりも愛してる、と胸を張って言える。
 幸い俺達は血の繋がりが無い。だからきっと、出来るはず。

 腕の中で眠っているユウのお腹の、下のあたり。子供を宿す所を掌で撫で摩る。
 機能はもうあるけれど(ユウが初潮を迎えたとき、俺が赤飯を炊いて祝った。俺は何故か殴られた)、でもユウはお母さんになるには早過ぎる。ユウはまだ高校生だ。出来れば大学だって行かせておきたい。勿論、女子大に行かせるけど。
 大学卒業してからだな、と俺は一人決めて頷いた。
 幸せな家庭にしよう。嘗て俺達の家がそうだったみたいに。きっと父さんも母さんも喜んでくれる。

「ねぇ、ユウ」
「…………」

 すやすや眠っているユウからは返事はない。

「将来、俺の赤ちゃんを産んで?」
「…………んー…………」

 上がった小さな寝言を了解と受け取って、俺は笑った。

「何時頃から予行練習しようかなー…………」








「おはよう神田…………首のところ、どうしたの? 虫さされ?」

 リナリーが俺の首筋を見て聞いた。
 朝起きたら幾つも散っていた紅い跡。なんだろう、と思ってラビに聞いたら返事は「さぁ?」だった。

「まるでキスマークみたいね。神田に限ってそれはないでしょうけど」

 エミリアが言う。
 だがその台詞で俺は合点が行った。

「――――――ああ!」

 何だ、アイツ。知らないなんて言っといて。

「昨日ラビと寝たんだ。その時にアイツが付けたんだろ」
「――――――、」
「あら、そうなの?」
「絶対そうだろ」

 アイツ、家に帰ったらとっちめてやる。
 俺が堅い決意を胸に空を仰ぐと、隣からは平坦なエミリアの声が聞こえてきた。

「…………ねぇリナリー」
「何?」
「神田のお兄さんって、本気なの?」
「みたいね。私も知らなかったわ」
「?」

 本気、って何にだ?

 振り向くが友人二人は何も言わない。
 何の事だ、と思いつつ。


「えぇ、まぁ、その。本人達がいいなら私はもう何も言わないわ。…………お幸せにー」


 まるで棒読みのそんな言葉を掛けられて、俺は首を傾げた。
 何か妙な勘違いをされている、と気付いたのはそれから二時間後。



 それが勘違いじゃなかった事に気付いたのは一年後だった。


 <完>

 神田嬢逃げて超逃げてオチ。
 高校卒業した所で食われる→大学卒業したら孕まされる。
 でもきっと「どうしてこうなった」位にしか思わないそんな神田嬢。
 長々とお付き合いいただきありがとうございました!


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