五年後@アレン元帥昇格後。
 オリジナルキャラクター注意。二人の弟子が出てきます。
 苦手な方は前回を最終話だと思ってください。







 久し振りの本部。
 北欧から戻ってきたばかりの僕は、先の方で見知った人影を見つけて、思わず喜びの余り大声を上げた。 
 
「元帥――――――!!」

 叫んで、あの人の下に走り出す。
 すぐ傍にいた子と話していたあの人は、僕の声に驚いた顔をしながら振り向いた。

「うぉっ!?」

 喜びの衝動のまま、元帥に飛び付いて抱き締めた。腕の中に閉じ込めて、長い黒髪に顔を埋めて、それから頬に一杯キスをする。
 ああ、早く頬だけじゃなくて別の所にもしたいのに!!

「お久し振りです、お会いしたかった!!」
「っ…………このクソバカモヤシッ!! デカい図体で何しやがるっ!!」 

 隣ではあの子――――――僕の弟弟子に当る元帥の弟子、クラウスが驚いて蒼い目を見張っている。

「…………お久し振りですウォーカー元帥」
「久し振りクラウス、元気だったかい?」
「ええ。…………、? ウォーカー元帥、王の姿が見えませんが」
「あ。」

 ヤバイ。
 置いてきちゃった!

「〜〜〜〜〜っこのドアホッ! テメェの弟子を置き去りにしてくるんじゃねぇ!!」
「ご、ごめんなさい!!」

 元帥は怒って僕を振り解いて拳を握る。
 僕は降参して慌てて諸手を上げて、それから自分が来た方を見た。
 そこにはこちらに向かって走ってくる姿がちゃんとあって、ちょっとほっとする。

「何で置いてくんですが師父!!」
「ご、ごめんねついつい…………」
「つい、じゃねぇよこの馬鹿モヤシ!」
「あっ、お久し振りです大師父! 師叔もお変わりなく、」
「ああ、お前こそ元気そうで何よりだ」

 飛蘭はにっこりと元帥とクラウスに笑いかけると、すぐさま表情を変えて僕をジト目で見た。
 …………うん、悪いとは思ってるんだこれでも一応。

「お前、報告は済ませてるんだろうな?」
「あ、はいそれはちゃんとさっき…………」
「…………師叔! 新型ゴーレムの操作法で教えていただきたい事があるんですが!」
 
 …………飛蘭が、クラウスにびっ! と手を上げながら言った。

「? あ、ああ。構わないんだが…………」
「…………行って来て構わんぞ。部屋は、前と同じ所を使え」
「はい、分かりました。師匠、何かあったらお呼び下さい」
「二時間位はいいですよ」
「…………? はい、」

 飛蘭とクラウスが二人して去っていく。
 其れを見送る元帥に、僕はにっこり笑った。

「気が利く子でしょう?」
「…………、…………、…………!! …………!? お前、まさかっ!」
「別に言いつけてないですよ。あの子が純粋に気を利かせてくれただけです。聡い子だから、気付いてるんでしょうね」
「おま…………っ」

 元帥はパクパクと口を開いたり閉じたりして、まるで「言葉になりません」って感じだ。
 
「いいじゃないですか。さぁ、行きましょう? 時間は長くないんですから」



 




 臨界者になって元帥に昇格した時、僕はこれまでの部屋から元帥クラス用の部屋に移った。
 別に元々本部にそれ程長くいられるわけでもないし、どうでもよかったんだけど。
 だけど、隣が元帥の部屋だって知ったら「どうでもいい」なんて言ってられる訳が無かった。

 だって、ほら、こんなに便利だ。

「…………どうしたんです? 元帥」

 ベッドの上。
 僕が上から今見下ろしている元帥は、溜息を吐いた。

「お前な…………その元帥ってのやめろ。お前も元帥だろーが、ウォーカー元帥」
「それは止めてください。…………僕にとって元帥は元帥ですよ」

 それならまだモヤシって呼ばれたほうがずっといい。
 
「大体元帥じゃなきゃ、何てお呼びすればいいんです?」
「…………俺のフルネーム位知ってるんだろうが」  
「ええまぁ、それはそうですけど」

 知ってるに決まってる。
 だけど、そんなの、不遜じゃないか。

 僕の考えを読んだのか、元帥が言った。

「俺がいいっつってんだよ」
「…………それなら、」

 覚悟を決めて、大きく一つ息を吸った。
 そんな僕を元帥はじっ、と黒曜石を思わせる瞳で見つめている。
 
「か…………ん、だ、」

 …………言っちゃった…………。

「…………遠慮する割りに最初から呼び捨てっつーのがテメェらしいな」

 元帥…………神田は嘆息した。

「え? ええ? 僕何か間違ってます!?」
「…………いい。別に間違っちゃいねぇよ」

 うろたえるも神田は教えてくれない。

「おら、どうでもいいから早くしろ。時間、ねぇんだろ」
「あ、はい、」

 神田、が、僕の大分伸びた髪を引っ張った。

「ったく、詐欺みてぇにデカくなりやがって」 
「詐欺って…………別に騙したつもりはないです」

 確かに僕は十代終盤で一気に背が伸びたけれど。
 しかもその勢いで神田を追い越したけれど。でもそれは元々人種的な差があるんだからしょうがない。

「ガタイが良くなっても中身が相変わらずなのが詐欺なんだよ、バーカ」
「…………う、」

 それは確かに自覚はある。
 襟元を寛げて露にした肌に舌を這わせながら、言葉に詰まる。

「こんな事ばっかり巧くなりやがって」
「上手いですか!?」

 嬉しくなって顔を上げたら、叩かれた。

「いたっ!」
「そうやってすぐ調子に乗る所も変わんねぇな!」

 …………あう。

「集中しねぇならやんねーぞ」
「は、はい! すいません!」

 最早条件反射だな、そう言えばあれもパブロフの「犬」って言うんだ。
 相変わらず、この人には叶わないんだ。
 そう思って、少し笑ってしまった。

「…………何だよ」
「いえ、何でも…………」

 初恋は実らない、だなんて野暮な人々が言ったけれど。
 実った想いを熱に変えて、僕は心底愛しい人に触れた。



『無垢なる者の恋』



<終>





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