※神田嬢にセクハラ的暴言を吐くアレンがいます注意※












 あんな奴大嫌いだった。







 初対面からクソ生意気なガキだった。
 理想を語るには弱すぎる癖に、あくまで理想を掲げようとする。
 足手まとい、そう思ったこともある。
 しかも新人の癖にあいつは、

『…………は、?』
『取り込み中です、後にしてください』

 任務中に平気で女を部屋に引きずり込む始末。
 流石あの悪名高いクロス元帥の弟子、師匠が師匠なら弟子も弟子だ、と心底呆れ果てた。

 事あるごとに鬱陶しい絡まれ方をされた。

『誘われたからお受けしただけです。断ったら失礼でしょう?』
『テメェ…………』
『それにしてもあの程度で騒ぐなんて、ヴァージンじゃあるまいし…………』
『…………』
『あれ? もしかして図星ですか? 意外』

 俺限定らしいが、セクハラ紛いの発言を何度聞かされたことか。
 腹立たしさに紛れて暴れればリナリーやラビに窘められる。理由を聞かれたって答えられなかった、それがまた苛立ちに拍車をかけた。口が裂けたって自分の口からなんざ言えた事じゃねぇ!!


 よく思われていないのは分かっていた。
 俺はリナリーのように愛嬌のある性格じゃなかったし(俺があんな風に笑っても気持悪いだけだ)、何も俺を敬遠するのはあのモヤシだけじゃねぇ。(その方が都合が良かった。俺は誰とも関わり合いになりたくなかった)。

『あのさぁユウ。せめてもーちっと、アレンと仲良く出来ねぇ?』
『…………あぁ?』
『年下さ? 15だよ15。ガキな訳じゃん、対等に喧嘩してどうするんさ』

 ラビの言う事が一理あるのは分かってた。
 けれどどうしたってラビの言うような冷静な対応が出来ない。





 変わり始めたのは、いつ。




『うわ、凄い事になってますねえ。さてはスキンかティキにでもヤられました?』
『…………テメェ…………』
『ま、どうでもいいですけど。変な物見せつけないでください、目の毒です』

 方舟の中。
 そう言って頭から被せられた団服のコートが意外にも大きくて。
 その瞬間まで15のガキだと思っていた。女を連れ込んでる様子を見てても、何処かで俺はコイツを「男」だと思ってなかった。
 だから、少しだけ。驚いた。


『君はそんなだからいい年して恋人の一人もいないんですよ?』
『いらねぇよクソが、誰しもがテメェらみたいな色ボケだと思うんじゃねぇ!』
『はは、それは強がりですか? オールドミスにでもなる予定なんですかねー』


 強がり?
 違う。
 違う、これは、

 恐怖、だ。


 親しい存在なんていらない、共に笑い合って手を重ねる相手なんていらない、
 どうせまたきっと「ああ」なるんだ。

(その位だったら誰も、何もいらない、ずっと一人で、ずっと独りで。)

 それに俺が幸せになんか、なって良い訳がないのに。

(だって俺は「  」を殺した 約束したのに、けれど壊した)

 一人でいい、独りがいい。
 だから誰も、俺の中に入ってくるな。

『…………まあ、折角美人なんですからその性格直せば幾らでも出来ると思いますけどね』

 俺の中に、入ってくるな。




 何かが少しずつ、変わってた。




『アルマ、』

 どうして。何で。
 俺が壊した、俺が殺したのに。ガキの頃の記憶と、思い出と共に俺が壊して殺して墓場に埋めたのに。
 なのに、どうして。

 今そこに、いるんだ。

 殺意を向けられる理由は分かっていた。俺は一度お前殺した。
 …………お前と一緒にあの時死んでいたら、何か違ったんだろうか。
 だが死ぬ訳には行かない、もう一度でも、何度でも、俺がお前を壊す。

 嗚呼、だけどどうしてこうもこの胸は痛むんだろう。
 救いなんて何処にも無い事なんてガキの頃から、目覚めた瞬間から知っていたのに。

『神田…………っ!』
『…………!』

 終わらない悪夢みたいな真っ黒の世界の中で、あいつの白い髪がまるで一条の光みたいに見えた。


「礼を言う、アレン・ウォーカー」


 マテールに送られる瞬間、俺は初めてあいつの名前を呼んだ。
 
 …………驚いたように見張られた目は、とても柔らかい色をしていた。





 神田嬢side。
 あくまでこれはギャグ小説の前振り。



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