適当にルベリエの部下をとっ捕まえ適当に高い酒を持ってこさせ(そもそもはルベリエの所為で帰ってきてるんだ、この位許されるだろう)、それを一人で開ける。
良い女と飲む酒は格別だが一人酒はそれはそれでいいもんだ。
これで教団に戻ってこさせられた憂鬱も、少しは紛れる。
と、だ。
「誰だ」
ドアが鳴った。
まさかルベリエじゃねぇだろうな。追い返すぞ。
ドアに睨みを効かせていると、
「僕です。入りますよ」
良く知った声が聞こえ、それから顔を覗かせたそいつはまごう事無き俺の弟子だ。
最後に見たときよりも大分デカくなっている。ティムから送られている画像では良く見ていたが実際見るとまた違うもんだ。
だが今一番目を引くのはアレンの成長ではなく、寧ろその後ろで控えている女の姿だろう。
「何の用だ」
「久しぶりなのにそう来ますか。まぁいいんですけど。一応、ご挨拶を。ね? ユウ」
「…………」
…………アレンに微笑みかけられ、はにかむように応える表情は随分と柔らかい。一気に娘らしさが増したようだ。アレンと怒鳴り合っていた姿を思えは信じられないほどだった。あの女には温厚なアレンが怒鳴る程なのだからどれ程のじゃじゃ馬なのかと思っていたが。
後ろから一歩踏み出してアレンの隣に並んだ神田は腰を折り、
「お久し振りです、クロス元帥」
「…………。あぁ」
「あれ、意外だ…………師匠の事だからもっと変なこと言うと思ってました」
まぁ何も知らなかったら言うだろうな。女を口説くのは礼儀みたいなもんだ。
だが流石に俺も、弟子の未来の嫁に手をだそうと思うほど鬼じゃねぇ。
「それで? 何の用だ?」
「もう聞いているかもしれませが。僕達、結婚します」
「…………」
目を細めて改めて前の二人を見る。
十四番目の宿主とセカンドエクソシスト。
また随分数奇な生を受けた者同士でくっついたもんだ。
あの寝小便ばかり垂れていた小僧が…………とふとそんな昔のことを懐かしく思い出す。
「アレン。いいのか?」
「はい?」
「結婚しちまったら流石に女遊びは褒められた事じゃねぇぞ?」
「しませんよそんなの!!」
アレンの女癖の悪さは確実に俺譲りだった。いや、悪いとは言わないかも知れない。誘われれば断らないというだけだ。誘ってくるように仕向ける手腕に長けているのだが。知る限り自分から強く誘うタイプでは無かった。
そもそもは性教育が面倒で愛人や娼婦に任せていたら実地で教えられた所為だ。
女達からの評判も悪くないからとそれを放置したのがまずかったかと思わないでもなかったが結局は男だ、放っとけばいいという結論に再度達した。
「僕は、ユウだけでいい。過去については今更申開きも出来ませんが、未来を彼女に捧げたい」
「…………」
あのアレンにそこまで言わせるか。
興味深さを感じて神田を眺める。
アレンが成長した所為もあるだろうが、昔よりも華奢になったような印象を受けた。…………余り安産体型ではないようだ。
「おい、神田」
「はい」
俺が呼ぶとアレンを見つめていた神田が俺を見た。
「それで、孫は何時産まれるんだ」
「…………は? 孫? ですか?」
俺の問いに神田はポカン、とした顔をした。
何だその反応は。
「…………孫? 僕らの子供なら、当分先ですよ」
「何だ、てっきり孕ませたから結婚するのかと思ったぞ」
「違います!」
ムキになったような顔でアレンが否定する。こういう所だけガキの頃と変わらない。
それはともかく、だ。
「結婚自体には反対も何もねぇが、お前はガキ作る前にもう少しちゃんと食っとけよ。そんな細い体じゃ難産になるぞ」
「は、はぁ…………」
神田は戸惑ったように頷く。
「それから、ガキを何人つくるかはお前らの勝手だろうがせめて一人位アレンに似たガキを産め」
「どうやって選択しろっていうんですかそんなの」
「気合いだ」
「また無茶な…………」
アレンが溜息を付いて天井を仰いだ。