「…………ふー、」
1日を終えた上様は、湯舟に浸かって疲れを癒しておられました。
湯殿番を必要とせず、一人になれるこの時間。1日の中で最も心安らぐ時間です。
ばたばたばたばたっ、がらっ!
「誰だっ!?」
しかしそんな時間をぶち壊したのが、
「僕ですよ、神田」
ご側室のお一人、白雪の方でした。
「てめっ、モヤシ、何しに来やがった!?」
「何って、背中流しに来たんですが何か?」
白雪の方は、湯帷子一枚に手拭いを持って、湯殿の中に入ってきました。
「さ、神田。上がってください」
「…………っ、」
上がったら最後、襲われる事くらい上様には分かりきっていました。なので湯舟の中で後退りします。
「っ、湯殿番の仕事なんてお前の仕事じゃねぇだろ!!」
湯殿番はもっと位の低い女中の役職です。
「ま、そうなんですけど。僕は側室として子を上げる為に大奥入りしたのに、全然そのお役目がないからいっそ湯殿番にでも転職しようかと思いまして」
言いながら白雪の方はちゃぷ、と音を立てて湯舟に足を入れました。
「…………それに昔から、御手付きになるのは湯殿番が多かったそうですしv」
「てめぇやっぱりそれが目的かぁぁぁぁっ!!」
「さ…………上様…………」
甘く囁き、上様の肩に腕を回した白雪の方は――――――
「調子に乗んなっ!」
「うわっ、がほっ! や、やめてくださいっ! ごごごごめんなさーい!!」
上様に後頭部から湯船の中に押し籠められました。
湯の中でじたばたもがく白雪の方を、上様は鋭い目で睨み据えます。
「ったく、お前もラビも碌な事しねぇな! 俺はもう上がるがお前はそこでしばらく反省してやがれ!」
言い捨てて、布で身体を包むと上様はさっさと湯殿を後にしました。
残された形の白雪の方は、びしょ濡れのまま、大きく溜息を一つつきました。