<12>

「まぁ…………お二人とも、何という事を…………」
「「…………」」 
「嘆かわしい事です。亡きお父様とお母様に、何とご説明なさるのですか」
「「…………」」
 
 石の詰められた財布を前に、二人組は叱られています。

「罪無き民から略奪を行うなどと、デザートローズの王族として反省すべき事と思いなさい」
 
 


「怒られたな」
「怒られたね」
「これもどれも」
「あれもそれも」
「「あいつらの所為だ!!」」





「で、さ。今後どうする?」

 スノーランドの宿屋。
 泊まる事までは拒否されずに、四人はその宿屋の一室に居ました。
 今は会議の為リナリーも男部屋に来ています。

「しゃーないし、一回南の方に戻るしかないさね…………場合に寄っちゃ他の方法考えなきゃ、魔界に行けないしさ」
「そうね…………」

 元々この国には船を目当てに来たのです。それが使えないとなれば用はありません。
 さっさと帰るが吉です。…………この国の、王国に対する敵意も気になります。
 
「明日早朝に出て…………」
「…………まぁ、無事に出してくれればいいんですけどね」
「だよな」
「?」
「!」

 窓際に立つアレンの物騒な一言に、ラビははっ、とした顔をしました。

「囲まれてる!」
「え?!」
「見てるだけだぜ、今のトコはね」
「出てきた所をぐっさり、って可能性は多分にありますが」

 流石に気配に聡い二人が、外を見下ろしながら続けます。

「で、どうするラビ? 正面切って向かってってもいいし」
「裏から逃げてもいいですし」
「そりゃあんたの決めるのに従うからさ」
「正面切る。何かあって宿や他の客に被害出すのだけは勘弁さ」
「オットコマエだね。どする? 今すぐ下行く?」
「ああ」

 ラビの一言に全員が素早く自分の武器を取ります。いざという時にはそのまま逃げられるように、貴重品だけは懐に仕舞いなおしました。
 灯りはつけたまま、部屋にいるよう装って四人は階下へと向かいました。
 
 



「つかあいつら、いつまで起きてんだ?」
「夜更かしだねっ! ヒヒッ!」

 人を引き連れた二人組は、影からこっそりと宿の二階を伺います。
 その窓には灯りが煌々としており、まだまだ眠る様子はありません。

「しかし、殿下。いいんですかい?」
「滅多な事をしちゃあの方が黙ってはおられないですよ」

 その場の数人は、腹を立てている主人を諌め様としますが、

「うっさいなーもう!」
「いーんだよっ! 別に命まで取ろうってんじゃないし!!」

 逆にその勘気に触れてしまいました。

「あの野郎共、ちょっとボコにしてやれればそれで…………」
「「「へーぇ?」」」
「「「「「!!!!」」」」」

 その場に割り込んできた声に、二人組や、その取り巻きがバッ、と振り向きました。 


 バキバキバキバキッ


 ラビが鳴らす指の間接の音がまるで何かの警戒音のようです。

「誰をボコにすんだって?」

 ティキがにーっこりと微笑みました。

「昼間は見逃してやったけどさぁ…………。躾のなってないガキんちょのお仕置きは、大人の役目だよなぁ?」
「なっ…………」


 ヒュンッ
 

 アレンが担ぎ上げたクレセントアックスの研ぎ澄まされた刃が月光を受けて、美しくも恐ろしい軌跡を描きます。

「ま、痛い目に遭わないと分からないなら痛い目に遭わせて差し上げますよ?」

 由来を知らずとも明らかに危険と分かるその武器に、周囲の人間からは血の気が引きました。

「で、殿下…………」
「こりゃ不味いですよ…………」
「逃げてくだせぇ、殿は俺が持ちますから!!」

「…………ん?」

 その言葉を聞きつけて、ラビは眉根を寄せました。

「…………まさか、お前ら…………」
「?」
「その肌、その訛り…………」

 ぶつぶつと何かを言い始めたラビにティキとアレンが瞬きます。
 その様子に、二人組とその取り巻きも戸惑いながらラビを見ました。

「…………そうか、だとしたら…………成る程ね…………」

 そして暫しの後、顔を上げたラビが放った一言は、彼らの動きとそして理性を奪うには十分すぎるものでした。

「デザートローズの王子様が盗賊に落ちぶれるとは…………世も世さねぇ?」




小説頁へ