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「な…………」
「知って…………」
「その訛り。南のもんさ。それからその肌の色…………ある程度南にいきゃそういう奴は多いけど、この国でそんなに人数が居るのはおかしい」
「…………っ!」

 二人組、そしてその取り巻きがあからさまに動揺しています。
 そこに追い討ちをかけるようにしてラビは続けました。

「スノーランドが警戒するのも分かるさ。…………デザートローズの王族を匿ってるならそりゃ神経質にもなる。下手すりゃうちの国と戦争になりかねない、諍いの火種だ」
「デザートローズの王子様…………? どうして? アーテフィリアにいるんじゃ…………」
「…………まぁたしかに、アーテフィリアに目が向いている今影武者でも立てておけば、スノーランドにいる貴方達は安全でしょうね」
「…………殿下」

 その台詞に、取り巻きたちが二人組の前に立ちはだかりました。

「へ、お前ら、」
「ヒヒッ、何っ!?」
「…………お逃げ下さい。そなたら、そこまで知っておるならば」

 闇の中、月明かりを受けて鈍く刃が輝きました。

「――――――生かしては置けぬ」





「おい、待てよ! 俺達はんなつもりは…………」
「いいえ、いけません殿下。この者共は東の国の犬。生かして帰せば必ずや殿下に災いを為すでしょう」
「で、でもっ」
「王子、逃げてくだせぇ。逃げて、『砂漠の薔薇』の尊い大事な血を、どうか次代に残してくだせぇ…………」
「そして何時か、我らの悲願を、」
「我らが祖国の復活を…………!」

「…………」

 じり、と二人組が後退りします。
 それを眺めたアレンが溜息を吐きました。

「…………あーもう、盗人成敗に来ただけなのにどうしてこんな面倒そうな展開になってるんでしょうね…………」
「別段国にチクるつもりもないけどね。まぁそっちがその気ならやるでもいいけどさ…………」

 二人組の取り巻き達はとても戦いに長けているようには見えません。武器も、その辺にいる民間人が自衛の為に持つような店売りの剣だけ。
 農夫か商人にしか見えない彼らに、アレンとラビはあからさまに気乗りしない様子です。

「っ! 待て! お前ら…………っ!」
「殿下、お先に御免!!」

 ですが、彼らが刃を携え突進してくるのに仕方なく、其々の武器を構えました。

「急所だけは外してあげますから…………ねっ!」


 ブン…………ッ 
 

 ガッ!!


「「「「「!!」」」」」」
「…………っ!!」
「ちょっ…………ティキ何やってるんですか!?」

 敵を薙ぎ払わんとしたアレンの一撃は、その間合いに飛び込んできたティキによって阻まれました。
 全力ではないとはいえ細身の剣でアレンの一撃を受けたティキは、その衝撃にか顔を歪ませその剣を取り落とします。

「な、なんで…………? お前、あいつらの仲間なんだろ…………?」
「はは、は…………何やってんだろな…………俺…………」
「は? 何馬鹿言ってるんさ、…………!!」

 慌てて駆け寄ったラビは、 敵を庇いアレンの一撃を受け、同時に敵の攻撃からアレンを庇ったティキの腹を貫いて切っ先を見せている敵の刃に息を呑みます。
 膝から崩れ落ちるようにして、その場に蹲ったティキの腹からはぽたりぽたりと液体が滴り落ちて行きました。

「く…………っそ、痛ぇ…………」
「ティキっ!!」

 駆け寄ってきたリナリーが慌てて腰の荷物から薬を探します。 
 取り出した薬草に絶望的な表情を浮べました。…………焼け石に水です。

「ひ、ひぃ…………」
「何だってんだよ…………」
「ラ、ラビ、これ抜いたら…………」
「駄目さ、出血が多くなる!! 誰か、何処か治療術士のいる所に…………」

 言いかけたラビは唇を噛みました。
 …………この国が、この街が、東の人間を助ける訳が無いのです。
 
「で、殿下、」

 戦意を喪失した彼らは、主君でもある二人組を仰ぎました。 
 
「…………誰か、治療術士を連れて来い」
「! あいつが治療術士だよっ! 早く、北の宿から連れてきて! ヒヒッ!」




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