<16>

「んじゃ、行きますか」

 翌朝。
 祖国に戻るため支度を整えた一行は、スノーランド城下町の入り口に居ました。
 周囲の突き刺さるような視線を物ともせず四人はてくてくと歩いていきます。


 ガササッ!!

 ダンッ!


「「「「!」」」」

 門を潜り抜けた辺り。
 突然人が上から降ってきました。
 咄嗟にアレンがリナリーを、ティキがラビを庇うようにして前に出ます。
 ですが降ってきた人影を見てティキは刃を下げました。アレンは相変わらず警戒した顔で落ちてきた二人組みを睨みつけます。

「あれ? お前ら…………」

 そこにいたのは、例の二人組――――――亡国デザートローズの王子だという二人でした。
 
「ん。」
「?」
「んん。」

 向かって右側の金髪の青年は右手を、左側の黒髪の青年は左側の手を互いに重ねており、そしてその手をティキに向かって突き出します。

「? 何?」

 その拳の中には何か握っているようです。

「「…………」」

 二人は何も言わずにじりじりと近寄ってきて、ティキに手を押し付けそしてその掌を開きました。

「お、」
「「…………」」

 そしてその手の中の物を押し付けると、脱兎の如く走り去っていき、あっという間に城下の喧騒に紛れてしまいました。

「何ですか? それ」

 ぽかん、とした顔で二人が走り去った後を見るティキの掌をアレンが覗き込みます。

「…………宝玉?」
「ですね。へぇ、透明度も高いし…………店売りすれば随分値がつきそうですよ。大体…………」

 透明な、大きな飴玉程の大きさの宝玉です。
 目敏く算盤を弾きはじめたアレンを止めたのはリナリーです。

「待って、これ、普通の宝玉じゃないわ。魔法が掛かってる」
「本当さ」
「? そうなんですか? 呪いでも掛かってるんですか?」
「いや、そういうもんじゃない…………と思う。コムイ…………いや、こういうのはクロスの専門さ」
「…………」

 黙って手の中の宝玉を見詰めていたティキは、ふと思いついたように自分の細剣を掲げました。

「「「?」」」

 そして他の三人が見守る中、柄の空洞にその宝玉を嵌め込みます。


 ――――――パッ!


「!」
「今、光った…………?」
「丁度ぴったりな大きさね」

 まるで誂えたかのように、宝玉はぴったりと空洞に嵌りました。
 そしてそれを見たラビは、眉根を寄せて、それから大きく溜息をついたのでした。






「なぁアレン」
「はい?」

 今は街道沿いで休憩中。
 さり気無くアレンの隣に陣取ったラビは、声を潜めてアレンに話しかけました。

「お前らってさ、何時ごろからクロスのトコに居た?」
「…………僕は五年位前からですけど。十歳位のときに、あのお店にお世話になるようになりました」
「へぇ。そん時ってもうティキはいた?」
「ええ。結構勤めて長いみたいでしたよ」
「何時頃からいるのかなんて知らないよな?」

 アレンは何故そんな事を訊くのか、という顔をした後答えました。

「さぁ…………詳しくは分かりませんけど。デザートローズとの戦争の時の、戦災孤児だって言ってましたから。その位からじゃないですか」
「…………へぇ…………」
「師匠やアニタさんは、当時まだ軍にいたそうですよ。デザートローズ戦にも出陣してて…………その時に戦災孤児を何人も保護して、あの酒場で雇って育てたそうです。ティキ以外にも、うちの酒場にいる従業員は大体皆そうです」
「…………」
「ですが、それがどうかしました?」
「いーや? 取り合えず、確信は出来たってとこさ。確証はないんだけど」
「…………?」

「取り合えずクロス見つけたら、一言文句言うしかないさ」





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